障害者雇用の採用代行と自社雇用、判断基準|費用・工数・定着支援・制度対応の4軸で整理

採用代行と自社雇用は優劣で選ぶものではなく、「採用後に受け入れ・定着を担える体制が社内にあるか」で決めるのが基本です。体制が整っていて採用人数も少ないなら自社雇用、募集の設計や母集団形成のノウハウが不足しているなら採用代行を部分的に使う、という考え方が現実的です。
ここでは、費用・工数・定着支援・制度対応の4つの軸で判断基準を整理します。
採用代行と自社雇用の違いを整理する
自社雇用は、求人票の作成、応募者対応、面接、配属、入社後のフォローまでを自社の人事・現場が担う方法です。採用代行は、このうち募集〜選考などの一部、または全体を外部事業者に委託する方法を指します。
ここで押さえたいのは、採用代行が担えるのは主に「入社まで」であり、入社後の受け入れは企業側の役割として残るという点です。委託範囲は事業者ごとに異なるため、契約前に「どこまでが業務範囲か」を書面で確認することが欠かせません。
また、障害の特性や必要な配慮は個人差が大きく、種別だけで一律に判断することはできません。どちらの方法を選ぶ場合でも、本人との対話を通じて配慮事項を具体化する工程が必要になります。
判断基準① 社内の体制と採用人数
最初に確認したいのは、社内に障害者雇用の経験者や、現場との調整役がいるかどうかです。受け入れ部署の理解、業務の切り出し、相談窓口の設置ができていれば、自社雇用でも進めやすくなります。
採用予定が年に1〜2名程度で、既存の採用フローに載せられる場合は、自社雇用のほうが費用を抑えやすい傾向があります。一方、複数名を短期間で採用する必要がある場合や、人事担当が他業務と兼任で手が回らない場合は、採用代行の活用が選択肢に入ります。
採用人数の多寡よりも、「担当者が何時間を確保できるか」を先に見積もることが、判断のずれを防ぎます。募集から入社までに必要な工数を洗い出し、社内で賄える範囲と不足分を切り分けてみてください。
- 採用担当は専任か兼任か
- 受け入れ部署に業務の切り出し案があるか
- 面接や職場見学の調整を誰が担うか
判断基準② 費用と法定雇用率への対応
法定雇用率は2.7%で、対象となるのは常用労働者37.5人以上の事業主です。改定前は2.5%から2.7%へと引き上げられ、対象範囲も従来の40.0人以上から広がりました。自社の常用労働者数から、必要な雇用人数をまず算出しましょう。
民間企業全体の実雇用率は2.41%で、法定雇用率を達成している企業の割合は46.0%です。つまり半数以上の企業が未達成であり、採用競争は決して緩やかではありません。
常用労働者100人超の企業では、未達成の場合に不足1人あたり月額5万円(年60万円換算)の納付金の対象となります。採用代行の費用を、納付金や採用が遅れた場合の機会損失と並べて比較すると、判断しやすくなります。ただし、費用の安さだけで選ぶと、入社後のミスマッチによる再採用コストが膨らむ可能性もあります。
助成金や納付金の最新の取扱いは、厚生労働省やJEEDの公開情報で確認してください。
判断基準③ 定着支援と受け入れ体制
障害者雇用では、採用して終わりではなく、定着までを見据えた設計が重要です。採用代行を利用する場合も、入社後の面談設定、配慮事項の共有、職場適応の支援が契約に含まれるかを確認しておきましょう。
特に見落とされがちなのが、現場の受け入れ準備です。業務指示の出し方、体調変化時の連絡方法、休憩の取り方などを事前に整理しておくと、入社後の戸惑いを減らせます。配慮の内容は個人差が大きいため、本人の希望と現場の実情をすり合わせる場を設けることが望まれます。
外部に任せられるのは手続きや調整の一部であり、職場の理解づくりは自社でしか進められません。ハローワークや地域の支援機関、就労支援事業所などの公的な連携先も、併せて活用を検討してください。
自社に合う進め方を選ぶ手順
実務では、次の順で検討すると整理しやすくなります。まず現状の雇用人数と法定雇用率からの不足数を確認し、次に社内で確保できる工数と受け入れ部署の状況を棚卸しします。
- 不足人数と採用希望時期を明確にする
- 募集・選考・入社後支援のうち、社内で担える工程を洗い出す
- 不足する工程だけを外部に委託できるか、複数の事業者に相談する
- 委託範囲、費用、報告頻度、定着支援の有無を比較する
全面委託か自社完結かの二択ではなく、工程ごとに分けて考えると、費用対効果を調整しやすくなります。たとえば、母集団形成だけを外部に任せ、面接と受け入れは自社で行う形も考えられます。
最初から大きく契約するのではなく、小規模に試して振り返り、翌期に範囲を見直す進め方も有効です。結果を保証する事業者の説明は鵜呑みにせず、根拠や過去の対応範囲を具体的に質問してください。
よくある質問
採用代行を使えば、法定雇用率は達成できますか?
採用代行は採用活動を支援するものであり、達成を保証するものではありません。入社後の定着や配置も雇用率に影響するため、受け入れ体制の整備とあわせて検討する必要があります。
自社雇用と採用代行は併用できますか?
可能です。募集や母集団形成のみを外部に委託し、面接や受け入れは自社で行うなど、工程ごとに分ける方法があります。委託範囲は契約前に書面で確認してください。
採用代行を選ぶ際に確認すべき点は何ですか?
委託範囲、費用の内訳、入社後の定着支援の有無、報告の頻度を確認しましょう。障害特性への配慮は個人差が大きいため、個別対応の方針も質問しておくと安心です。
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