障害者雇用でも副業は可能?企業の現状と障がい者におすすめの副業戦略

近年、副業解禁が全国の企業で進んでおり、ベンチャー企業だけでなく大企業においても副業を許容する動きが活発になっています。特に、リクルート、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、キリンホールディングス、パナソニック、ソフトバンクなどの大手企業では、数年前から副業解禁の制度を導入し、従業員の自己成長や多角的な収入源の確保、さらにはイノベーションの創出につながる取り組みが進められています。

本記事では、現状の企業の副業導入実績や割合をデータに基づいて解説し、障害者雇用において副業が果たす役割やメリット、さらには具体的な副業例について詳しくご紹介します。

企業の副業導入の現状と背景

近年、副業が企業の働き方改革の一環として注目される中、ベンチャー企業では創業当初から副業や兼業が前提となっているケースが多く見受けられます。一方、大企業においても、数年前から徐々に副業を解禁する動きが進んでおり、従業員のキャリア形成や多様な働き方の促進、さらには人材の流動性を高める施策として評価されています。

例えば、リクルートは社内で副業を積極的に奨励する文化を構築しており、従業員が自分の専門分野や興味に合わせた副業にチャレンジできる環境を整えています。また、みずほフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループなどの金融大手は、規制やリスク管理の厳しい業界でありながら、副業を認めることで従業員の柔軟な働き方を支援し、結果として従業員のモチベーション向上に繋げています。さらに、キリンホールディングス、パナソニック、ソフトバンクなども、時代の変化に合わせた働き方改革の一環として副業解禁を進め、個人のスキルやキャリアの幅を広げる施策を積極的に導入しています。

副業解禁の理由として、企業は以下のような点を挙げています。

  • 多様な働き方の促進と人材の流動性向上
    従業員が副業を行うことで、外部の新しい知識やスキルを取り入れる機会が増え、組織全体のイノベーションが期待されます。また、自己啓発の機会として副業が有効に機能するため、従業員のキャリアアップにもつながります。
  • 収入の多角化によるリスクヘッジ
    本業だけでは収入が安定しない場合、副業により収入源を増やすことで、経済的不安定さを軽減できる可能性があります。特に、障がい者の場合、平均年収が身体障害者で約250万円、精神障害者で約150万円と低水準であるため、副業による収入補填は非常に有効な手段です。
  • 柔軟な働き方の実現
    働き方改革の一環として、副業を認める企業は従業員のワークライフバランスを重視し、柔軟な勤務体系を提供することで、従業員満足度の向上を図っています。

このような背景から、企業における副業解禁は急速に進んでおり、障害者雇用においても副業は十分に認められるべき働き方として議論されています。

障がい者にとって副業が有効な理由とその効果

給与が低い現状と収入補填の必要性

障がい者の給与実態を見ると、身体障害者の平均年収は約250万円、精神障害者は約150万円と、一般の会社員に比べて大幅に低い傾向があります。さらに、多くの障がい者が契約社員や非正規雇用で働いているため、将来的な雇用不安や解雇リスクが常に伴います。こうした現実から、障がい者自身が自助努力による資産形成や収入の多角化を図ることは、将来の生活安定に直結する非常に重要な対策となります。

副業を通じた収入補填は、以下の理由で障がい者にとって大きなメリットがあります。

  • 収入の安定化
    本業の給与が低い場合、副業で追加収入を得ることができれば、月々の生活費や将来の資産形成に余裕が生まれます。障がい者の多くは障害年金を受給していないため、給与だけで生活している状況では、急な出費に対応するのが難しいです。
  • 経済的不安の軽減
    副業で得た収入を貯蓄や投資に回すことで、老後資金や緊急時の資金としての備えを作ることができます。これは、将来的な「貯金2000万円問題」に対する一つの解決策ともなります。
  • 自己実現とスキルアップ
    副業は単に収入を補うだけでなく、自己の興味やスキルを発展させるための貴重な機会となります。副業を通じて新たなスキルや知識を得ることで、本業にも好影響を与え、キャリアアップにもつながる可能性があります。

障がい者に副業が認められるべき理由

障がい者が副業を行う際には、企業の副業解禁の動きと合わせて、以下の理由で積極的に支援されるべきです。

  • 従業員エンゲージメントとリテンションの向上
    副業により収入源が多角化すると、生活の安定感が向上し、従業員のモチベーションやエンゲージメントが高まります。結果として、離職率の低下にも寄与し、企業全体の生産性が向上する効果が期待できます。
  • イノベーションの創出
    障がい者が副業として独自のアイデアや視点を活かし、新たな製品やサービスを創出するケースは少なくありません。障がい者ならではの経験や考え方が、企業のイノベーションにつながる可能性は大いにあります。
  • 多様性の推進と企業イメージの向上
    副業を認める企業は、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業として評価されるため、社会的評価やブランドイメージの向上にも寄与します。障がい者の副業活躍事例が広がれば、企業は「障がい者に対しても柔軟な働き方を提供する先進企業」として、業界内外で注目を浴びるでしょう。

企業が障がい者の副業を支援するための具体的施策

企業は障がい者が副業を行いやすい環境を整えることで、従業員の収入補填と自己実現を支援し、結果として企業全体のワークエンゲージメントや生産性向上に寄与することが期待できます。ここでは、企業が導入できる副業支援の施策をリスト形式でまとめます。

給与前払いサービスの導入

  • 内容:従業員が急な出費に対応できるよう、給与の一部を給料日前に前借りできる仕組み。
  • メリット:障がい者の中には、病気や通院など突発的な出費が多い人もいるため、経済的な不安の軽減に寄与する。

家計管理アプリとの連携

  • 内容:従業員が自分の収支を管理できるアプリを提供し、先取り貯蓄の仕組みを導入する。
  • メリット:給与が自動的に一定額貯蓄に回ることで、資産形成の習慣化が促進される。

金融リテラシー向上セミナー

  • 内容:外部のファイナンシャルプランナーや公的機関の専門家を招き、投資や貯蓄の基本、家計管理の方法を学ぶセミナーを開催する。
  • メリット:障がい者の多くは金融知識に乏しい場合があるため、正しい知識を身につける機会として有効。

副業に関する情報提供とキャリア相談

  • 内容:障がい者が副業を始める際に参考になる情報や、具体的な始め方、成功事例を紹介するオンラインプラットフォームの運用。
  • メリット:副業を始めるための不安や疑問を解消し、自己実現と収入増加の道筋を明確にする。

柔軟な勤務制度の整備

  • 内容:企業内で副業を行う際、本業と副業の両立を可能にする勤務制度(在宅勤務、フレックスタイム、短時間勤務)を導入する。
  • メリット:障がい者が自分の健康状態や生活リズムに合わせて働けるため、無理なく副業に取り組める環境が整う。

健康管理とメンタルヘルスケアの強化

  • 内容:副業が体調やメンタルに負担を与えないよう、社内カウンセリングやストレスマネジメントのプログラムを充実させる。
  • メリット:副業に取り組む際の健康リスクを軽減し、継続的な労働能力を維持する。

投資支援制度の活用促進

  • 内容:副業としての投資(株式投資、インデックス投資など)に関して、新NISA制度の活用方法や投資商品の選び方を社内で共有する。
  • メリット:副業収入の補填だけでなく、長期的な資産形成の一環として投資を促進することで、将来の経済的安定が図られる。

障がい者におすすめの副業事例

企業が障がい者の副業をサポートする上で、実際にどのような副業が適しているのかも重要な検討ポイントです。ここでは、障がい者が取り組みやすいとされる副業をいくつかリストアップし、それぞれの特徴と期待される収入面のメリットについて解説します。

Webベースのコンテンツ制作

  • 具体例:ユーチューバー、インスタグラマー、ブログ運営
  • 特徴:自宅や好きな場所でコンテンツを制作でき、クリエイティブな発想が活かされる。
  • 収入面:人気が出れば広告収入やスポンサー契約により大きな収益が見込めるが、初期は少額からスタートするケースが多い。

プログラミング・Webデザイン

  • 具体例:プログラマー、Webデザイナー、システム開発
  • 特徴:DX化やAIの進展により、デジタル人材の需要が急増している。
  • 収入面:スキルが高ければ案件単価が高くなるため、業務委託契約やフリーランス契約として高収入が期待できる。
  • 備考:未経験からでも独学やスクールで学び、徐々に実績を積むことが可能。

ライティング・翻訳業務

  • 具体例:ライター、翻訳者、コンテンツ編集者
  • 特徴:文章作成や翻訳は、在宅勤務が容易な業務であり、障がいのある方でも自分のペースで作業できる。
  • 収入面:案件ごとの報酬形態で、特に専門性があるテーマでのライティングは高単価になる場合がある。

オンライン講座・コンサルティング

  • 具体例:専門知識を活かしたオンライン講師、ビジネスコンサルタント、キャリアアドバイザー
  • 特徴:自分の得意分野を活かして、副業として専門知識を提供できる。障がい者であっても、長年の経験や独自の視点を活かすことができる。
  • 収入面:受講料やコンサルティング料が案件ごとに高額となる場合が多く、成功すれば安定した副収入が見込める。

クラウドソーシングでの受託業務

  • 具体例:データ入力、簡易な事務作業、簡単なデザイン作業など
  • 特徴:クラウドソーシングサイトを通じて、短期・単発の仕事を受けることができるため、気軽に副業を始めやすい。
  • 収入面:案件ごとに報酬が支払われるため、複数の案件を掛け持ちすることで安定した収入につなげることが可能。

投資(株式投資や積み立て投資)

  • 具体例:新NISAを活用した積立投資、インデックス投資
  • 特徴:初めは少額から始めることができ、長期的に資産形成を図る手法として有効。障がい者にとっても、リスク分散のために初心者向けの投資信託やインデックス投資は取り組みやすい。
  • 収入面:市場の上昇局面ではキャピタルゲインや配当金を期待でき、安定した副収入源となる可能性がある。

外資系投資銀行に勤務する私の例:コンサル会社を副業

現在、外資系投資銀行の人事部に勤めています。入社する前は当サイトを運営している株式会社ビズモアのCEOをやっていました。実は現在もビズモアのCEOを副業として行なっています

最近では三井住友フィナンシャルグループやみずほフィナンシャルグループで副業が解禁されたとは言え、金融機関は業界ルールが厳しく、株式投資などに制限があります。その中でも外資系投資銀行はさらにインサイダー情報などが集まりやすい業界になるので、入社前は副業は難しいというイメージがありました。

でも、実際のところは多くの投資銀行で副業を可能としているところが多いようです。というのも、年収が数千万円、数億円の社員がいて、投資に制限がある中で縛りがないのが不動産投資であり、節税にもなるので不動産を投資目的で所有する人は業界的に多いと聞いています。不動産投資も立派な副業になりますし、多くが法人で所有しているので副業がOKとしています。

そんな背景もあって入社前から副業の手続きはスムーズに移行することができました。基本的に投資など金融関係の業務でもない限り、弾かれることはない気がするので意外に結構緩い印象です。Webマーケティングやコンサルティングを行う企業として登録していますが全く問題ありませんでした。

現在は、法人向けに障がい者採用の支援や個人向けにハイキャリア転職支援などを行なっています。このビジネスはまだ数ヶ月ですが既に多くの方にご利用頂いており売上も上がっています。累積欠損金がそこそこあるので一定の売上までは法人税がゼロのままです。

今回、副業の例として株式投資を挙げました。投資銀行は業界ルールで投資に制限があるとお話しましたが、インサイダー情報に接触する機会のないバックオフィスはそれほど厳しくなく、株式投資なら事前に購入する銘柄の承認を貰えば投資ができるようになっています。既に、三菱商事や三菱UFJフィナンシャルグループ、INPEX、商船三井、住友電工など数百万円分を購入しています。業界ルールで30日間売却停止というものを除けば、投資銀行勤務でも投資はしやすい環境にあると思っています。本業でも稼ぎつつ、副業でも稼ぎ、かつ株式投資でもインカムゲインとキャピタルゲインで利益を得て、純資産拡大を目指しています

まとめ

障害者雇用において、副業は単なる余剰収入を得る手段ではなく、将来に向けた資産形成の自助努力として非常に重要な役割を果たします。現状、障がい者の平均年収は低く、雇用形態が不安定であることから、副業による収入補填は生活の安定や将来のための資産形成において大きな意味を持ちます。また、企業側も副業解禁の動きが進む中で、障がい者が安心して副業に取り組める環境を整えることは、従業員エンゲージメントの向上やリテンションの改善につながります。

副業としておすすめの分野は、Webで完結するクリエイティブな仕事、プログラミング、ライティング、オンライン講座、コンサルティング、さらにはクラウドソーシングによる受託業務など、多岐にわたります。特に、DXやAIの進展によりデジタル人材が求められる現代において、これらの分野で副業を始めることは、自身のスキルアップと収入補填の両立が可能な戦略的選択肢となるでしょう。

さらに、投資も障がい者にとって有力な資産形成手段のひとつです。新NISAの導入により、投資で得られる利益が非課税となるため、少額からの積み立て投資が特に魅力的です。インデックス投資を中心とした低リスクな運用であれば、長期的な資産形成を確実に進めることができるでしょう。

障がい者の副業を始める際は、体調やメンタルに無理をかけないよう、徐々に慣れていくことが大切です。最初から無理をすると本業に支障をきたす可能性もあるため、十分な生活防衛資金を確保したうえで、少額からチャレンジすることが推奨されます。

当社の障がい者採用支援サービスでは、採用計画の策定から採用戦略の作成、具体的な採用方法の立案、さらには入社後のサポート体制の構築まで、幅広く支援を行っています。障がい者が本業でしっかりと働きながら、副業を通じた収入補填や将来の資産形成を進めるための環境づくりを目指す企業の皆様は、ぜひ当社にご相談ください。

※本記事の内容に基づいて実施された副業や投資の結果について、当社は一切の責任を負いかねます。各自、自己責任のもと十分にリスクを理解し、検討してください。