障害者転職のリファラル採用とは?メリット・デメリットをご紹介。特性や合理的配慮を伝えることも可能
リファラル採用(英語:referral)という言葉を耳にしたことはありますか?
「リファラル」とは、社員や企業関係者など、会社に近しい人からの「紹介」により候補者を採用する手法を指します。企業側は知人の推薦という形で応募者を得るため、社内外問わず広範囲に人材を獲得できる一方、転職活動中の障がい者の方にとっても自分の特性を理解した上で推薦してもらえるという安心感があります。
本記事では、障害者転職のリファラル採用について、メリット・デメリットや活用ポイントを詳しく解説します。近年、企業は多様な人材を確保するために採用手段を多角化していますが、その中でも注目度が高まっているのがリファラル採用です。特に、法定雇用率の引き上げなどを背景に、障がい者雇用の重要性が増す中で、「リファラル採用だからこそマッチングがうまくいく」という可能性も広がっています。ぜひ、最後までお読みいただき、転職活動の新たな選択肢として検討してみてください。
1.リファラル採用とは何か?障害者雇用における注目ポイント
リファラル採用(referral)の概要
リファラル採用は、英語でreferralと書き、「紹介」や「推薦」を意味します。一般的には「社員紹介採用」とも呼ばれ、下記のような流れで実施されるケースが多いです。
- 企業の社員や関係者が、知人・友人・元同僚などを推薦する
- 推薦を受けた人材が企業の選考プロセスを受ける
- マッチングが成立すれば採用となる
採用コスト削減やミスマッチ防止を目的に、近年ではスタートアップから大企業まで幅広く導入されており、海外ではごく一般的な手法です。企業にとっては、候補者の実績や人柄を一定程度把握した状態で選考を進められるため、採用後の定着率が高い傾向があります。また、候補者にとっては「自分のことを知っている人が推薦者としている」安心感や、推薦者を通じて職場の情報や社内の雰囲気を事前に得られるメリットがあります。
障害者転職における特徴
障害者枠のリファラル採用には、以下のような特徴があります。
- 障がいの内容や必要な合理的配慮を、推薦者が企業に事前に伝えやすい
- 社内理解が進みやすく、「部署・仕事とのミスマッチ」を抑えられる
- 紹介元との信頼関係があるので、採用後の職場定着率が高くなりやすい
特に、障害者雇用の場面では、実際の職務内容や職場環境が自分に合うかどうかが転職の成否を左右します。リファラル採用であれば、推薦者があらかじめ候補者の障がい特性や配慮事項、得意・不得意などを把握しているため、企業側も具体的なイメージをもって選考を進められます。結果として、障がい者本人にとっても職場定着の可能性が高まるというわけです。
2.障害者転職のリファラル採用:メリット・デメリット
リファラル採用には、障がい者と企業の双方にとってさまざまな利点があります。しかし、一方で課題がないわけではありません。
メリット
- ミスマッチの減少
リファラル採用では、推薦者が障がい者と企業の両方をよく知っているため、採用後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチが起こりにくくなります。紹介する際に職場の環境や業務内容を正確に伝え、本人の障がい特性に合った配慮を検討したうえで話を進められるからです。 - 選考スピードの向上
外部の求人媒体やエージェントを通すよりも、社内ネットワークを介した紹介のほうがスピーディーに選考が進みやすい場合があります。推薦者が直接面接担当者や人事にコンタクトを取れることから、書類選考や面接日程の調整がスムーズに進む可能性が高いです。 - 人柄や働き方の理解が深まる
履歴書や職務経歴書だけでは伝わりにくい「働き方のスタイル」や「コミュニケーションのとり方」などが、推薦者を通じて企業側に伝えられます。企業としても、入社前に具体的なイメージを持てるため、合理的配慮の準備や業務内容の調整がしやすくなります。 - 社内の協力体制が整いやすい
リファラル採用の場合、推薦者が社員であることが多いため、入社後のフォロー体制が自然に形成されやすいです。推薦者がメンターや相談役となり、「困ったときにすぐ声を掛けられる」環境を作りやすいでしょう。この点は障がい者の職場定着を高める上で大きなメリットとなります。
5 採用コストを抑えることが可能
転職エージェントを使って障がい者を採用した場合、年収の30%〜35%を仲介手数料として転職エージェントに支払う仕組みになっています。仮に、年収500万円の従業員の場合には仲介手数料が150万円前後発生することになります。しかし、リファラル採用の場合なら手数料を大きく節約することができます。リファラル採用の場合、紹介した従業員にインセンティブとして幾分の手数料を支払う企業があるものの、転職エージェントと比べると大幅に安いです。ちなみに、外資系投資銀行の場合は平均年収が高いので、リファラル採用の手数料も高額であり、数年経験を積んだ従業員を紹介しただけで100万円近く貰える企業もあります。
デメリット
- 推薦者の人間関係に依存する
リファラル採用は、基本的に「推薦者と障がい者の関係性」や「推薦者と企業の信頼関係」に大きく左右されます。そのため、推薦者を頼りすぎると、社内での受け入れ体制や配慮が不足するリスクもあります。また、推薦者と障がい者の間に万が一トラブルが生じた場合、職場環境に悪影響を及ぼすこともあり得ます。 - 情報量の偏り
企業側は推薦者からの情報をある程度信用しますが、それゆえに「客観的な評価や事実確認が不十分」になる可能性があります。たとえば、実際には特定の障がい特性によりある業務が難しいにもかかわらず、推薦者の理解不足で企業に正しく伝わらないケースもあり得ます。 - 候補者の選択肢が限定される
リファラル採用は自分の友人や知人を介した紹介が主となるため、どうしても候補者側のコミュニティやネットワークに依存します。障がい者の方が希望する業界や業種に、都合よくリファラルのつながりを持っていない場合、活用しづらいという難点があります。 - 採用後の過度な期待や遠慮
お互いが知人同士の場合、採用後に「推薦者との関係を保つために遠慮してしまう」「思った以上に仕事が合わなかったが辞めづらい」といった心理的な制約が生じる恐れがあります。障がい者としては、体調面や配慮面に改善が必要でも、推薦者に顔を立てるために我慢してしまうケースが出ないよう注意が必要です。
3.障害者転職でリファラル採用を活用するポイント
リファラル採用は、自分にマッチした環境や円滑な職場定着が期待できる一方、前述したようなデメリットにも注意する必要があります。ここでは、障がい者の方がリファラル採用を活用する上で押さえておきたいポイントをまとめました。
自分の障がい特性をきちんと伝える
リファラル採用では、推薦者がいるため、企業側は「どのような人材が来るのか」比較的イメージしやすいです。しかし、それだけに障がいの内容や必要な配慮が正しく伝わらないリスクもあるので、本人からも積極的に情報を共有しましょう。
- 具体的にどのような業務が得意・苦手か
- 通院や体調管理にどの程度の配慮が必要か
- 仕事上で苦手なシチュエーションは何か
推薦者にはもちろんですが、面接や選考の段階で企業の担当者にもきちんと説明し、「自分が最も力を発揮できる環境づくり」を協力して進めていくことが大切です。
推薦者とのコミュニケーションを大切にする
リファラル採用の成否は、推薦者との関係が大きく影響します。推薦者がどの程度企業のことを理解しているのか、また本人の障がい特性や希望の働き方をどれほど把握しているのかで、採用後の満足度は左右されます。事前に以下のような点について推薦者とすり合わせを行いましょう。
- 企業の業務内容や社風、職場環境
- 障がいに対する企業文化の理解度や配慮体制
- 選考過程や面接で特にアピールすべきポイント
推薦者とのコミュニケーションがしっかりしているほど、採用後のミスマッチを防ぐことができるでしょう。
他の採用手段と併用する
リファラル採用は非常に有効な手段ですが、自分のネットワークや紹介者の状況に左右されやすいという弱点もあります。したがって、直接応募や求人サイト・障がい者向け転職エージェントなど、他の採用手段と併用するのがおすすめです。
- 応募できる企業の数や種類を増やす
- 複数の企業と比較検討して、より自分に合った職場を選ぶ
- リファラル採用では得られない客観的なアドバイスをエージェントから受ける
これらを並行して行うことで、転職活動全体の成功確率が高まります。
採用後のフォロー体制を確認する
リファラル採用は入社前の認識共有がしやすい一方、入社後のフォロー体制が不十分な企業も存在します。とくに障害者雇用の場合、働きはじめてからのケアが不足すると、体調面や仕事内容の不一致が原因で早期離職につながる可能性があります。したがって、以下の点を事前に確認しておきましょう。
- 障がい者専門の支援担当者(産業医・人事担当など)がいるか
- 定期的な面談やヒアリングの制度が整っているか
- 困ったときに気軽に相談できる窓口があるか
社内でしっかりと障害者雇用をサポートする体制があると分かれば、リファラル採用で入社してからも長期的に働きやすくなります。
まとめ
リファラル採用(referral)は、社員や社内関係者からの紹介で候補者を採用する方法です。障害者転職においては、推薦者が障がいの特性を理解し企業へ具体的に伝えやすいため、採用後のミスマッチが起こりにくいという大きな利点があります。一方、推薦者との関係に依存したり、情報が偏ったりするリスクも無視できません。
障がい者のリファラル採用は狭い業界ほど候補者に有利に働きます。投資銀行のような経験者が少ない業界だと、候補者自体が少なく、その上、人間性や能力などに一定の信用力があるとなれば有利に働いてきます。また、障がい者採用支援でサポートした中には、法定雇用率を達成する為に、リファラル採用で採用した人に前職の従業員を紹介してもらうところもありました。
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