障害者雇用促進法とは?その仕組みと目的をわかりやすく解説

障害者雇用促進法の概要

障害者雇用促進法は、障害のある方の雇用機会を増やし、職場での働きやすい環境を整えることを目的とした法律です。この法律は、日本の労働市場において障がい者が活躍できるよう支援する仕組みを整備しています。具体的には、障がい者の雇用義務を企業に課し、雇用率を達成する努力を求めるとともに、達成状況に応じた措置を講じています。

この法律は、単なる雇用の推進だけでなく、障がい者が職場で活躍し、長期的に定着できる環境作りを目指しています。

障害者雇用促進法の目的と背景

1. 法律の目的

障害者雇用促進法の目的は、以下の3点に集約されます:

  • 障がい者にとって適切な雇用機会を提供すること
  • 障がい者が職場でその能力を発揮できる環境を整えること
  • 社会全体のダイバーシティとインクルージョンを促進すること

2. 制定の背景

1960年代、日本では障がい者の就業率が極めて低い状況にありました。この問題を解決するために、1960年に障害者雇用促進法の前身である「身体障害者雇用促進法」が制定されました。その後、対象範囲が知的障害者や精神障害者に拡大され、現在の障害者雇用促進法が成立しました。法改正を繰り返しながら、障がい者の雇用機会を広げる施策が進められています。

障害者雇用促進法の主な仕組み

1. 法定雇用率の設定

障害者雇用促進法では、企業に対して障害者を一定割合以上雇用することを義務付けています。この割合を「法定雇用率」といい、現在は2.5%(2024年時点)となっています。さらに、2026年度には2.7%への引き上げが予定されています。

障害者雇用の実雇用率が20年連続で増加していますが、背景にあるのは法定雇用率の引き上げにあります。現在の実雇用率は2.33%で、多くの企業が法定雇用率を満たしていません。企業の多くは、2.5%ではなく、2.7%を見据えて採用計画と採用戦略を作成し、採用活動を実施しています。というのも、優秀な障がい者の採用には時間がかかる為に、年単位で採用活動を行なっているからです。

  • 対象企業:従業員数が40人以上の企業
  • 雇用率未達成の場合:障害者雇用納付金が課される

2. 障害者雇用納付金制度

法定雇用率を満たさない企業には、従業員1人あたり月額5万円の納付金が課されます。一方、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業には、障害者雇用調整金や報奨金が支給される仕組みもあります。

  • 納付金の用途:納付金は、障がい者の雇用を支援するための助成金や職場環境整備費用として活用されます。

3. 雇用支援施策

障害者雇用促進法では、障がい者の就労を支援するために、以下のような施策も用意されています:

  • ジョブコーチ制度:職場への適応を支援する専門家の派遣
  • 職場環境整備助成金:バリアフリー化や合理的配慮を実現するための助成
  • トライアル雇用:試用期間を設けて適性を評価する制度

障害者雇用促進法が企業に与える影響

1. ダイバーシティ経営の推進

障害者雇用を促進することで、企業は多様な人材を活用するダイバーシティ経営を推進できます。これは、組織の柔軟性や革新性を高める効果が期待されています。

2. 社会的責任(CSR)の履行

障害者雇用促進法への対応は、企業の社会的責任を果たす一環と見なされます。法令遵守により、企業イメージの向上にもつながります。

3. 助成金の活用

障害者雇用促進法に基づく助成金を活用することで、企業は雇用にかかる初期コストを抑えることができます。

4. 人的資本経営の推進

従業員を人件費として捉えるのではなく、投資すべき資本として捉える人的資本経営を導入する企業が増えています。これは障がい者の雇用においても同様で、障がい者も資本として認識され、投資に対する成果を求められます。

障害者雇用促進法の課題と今後の展望

課題

  1. 法定雇用率の達成率の低さ
    中小企業を中心に、法定雇用率を達成していない企業が多い現状があります。不足した障がい者には障害者雇用納付金として1人あたり毎月5万円が課されますが、中小企業にとっては採用コストの方が高くつくという理由から、最初から障害者雇用納付金を支払う企業も多いんが実態です。また、採用コストだけでなく、障がい者をどう雇用すればいいのか理解不足もあれば、適した業務を割り出すのが難しいというのもあります。
  2. 職場環境の整備不足
    障害者が働きやすい職場環境が十分に整備されていないケースがあります。特に、身体障害者の方を雇い入れる場合には階段や段差など細かいところに配慮して働く環境を整備しなければなりません。補助金はあるものの、バリアフリーを一から整備するのはコストがかかるのが実態としてあります。
  3. 精神障害者の雇用率の低さ
    精神障害者の雇用は増加傾向にあるものの、身体障害者や知的障害者と比べて雇用率が低い状況です。障害種別の雇用割合では、身体障害者が47.5%であるのに対して、精神障害者が19.4%、発達障害者が8.2%と低いです。ここまで低いのは、精神障害者の雇用が義務付けられたのが2018年と最近というのが大きな理由です。その為、まだ多くの企業で精神障害者や発達障害者の採用や雇用のノウハウが蓄積されておらず、雇用率が低くあります。

展望

今後、障害者雇用促進法の改正や助成金制度の拡充により、さらなる雇用促進が期待されます。また、企業に対する支援体制の強化や障害者本人のスキルアップを促進する施策が重要となります。

障害者雇用促進法によって障がい者の雇用が義務付けられていますが、本来はダイバーシティや人的資本経営などの観点から障がい者は雇用されるべきです。障がい者目線で製品やサービスでイノベーションを起こすことができるかもしれませんし、業務の標準化を通して、生産性が向上するかもしれません。その為にも、障がい者が会社の利益に貢献できる人材であることを企業側は理解する必要があると思います

まとめ

障害者雇用促進法は、障がい者が活躍できる社会を実現するための重要な法律です。この法律を通じて、企業は多様性を取り入れながら持続可能な成長を目指すことができます。

当社では、障がい者採用支援を通じて、採用計画から採用戦略の作成、採用方法の策定などの支援を行なっています。障がい者雇用に関心のある企業の方は、ぜひお問い合わせください。