一般枠から障害者転職は可能?実際の転職活動とそのメリット・デメリット

障害者転職は、一般の転職活動と基本的な流れは変わりません。履歴書・職務経歴書の作成、書類選考、複数回の面接、そして内定という一連のプロセスは、健常者の転職と同様です。ここでは、一般枠での転職活動の経験がある方ならば、障害者転職でもすぐに実践できるポイントと、その実態、そして転職活動時に考慮すべき点を詳しく解説します。

転職活動の基本フロー

障害者転職も一般枠の転職と同様、以下の流れで進みます。

履歴書・職務経歴書の作成

  • 自分の経歴、スキル、資格、実績を記載。
  • 障がいに関しては、合理的配慮が必要な点や障がいの特徴を簡潔に記載する場合もあります。

書類選考

  • 応募企業は、提出された書類をもとに、候補者が自社の求めるスキルや経験に合致しているかを判断します。
  • 一般枠と比べると障害者枠の方が通過率は高めで、20〜30%と言われています。

面接(複数回の場合が多い)

  • 一次面接、二次面接、最終面接などを経て、企業が求職者の適性や意欲、コミュニケーション能力を評価します。
  • 募集段階ではオープンポジションという形で募集しており、配属予定先が決まっていないので、一次面接は人事が担当することがほとんどです。その上で、二次面接以降で部門面接となります。
  • 質問内容も基本的には同じです。ただし、障害の状況や特性、通院・服用、合理的配慮など障害者枠ならではの質問もあります。むしろ、これらの質問の方が大事だったりします。

内定

  • 面接の結果を踏まえ、企業から内定通知が出され、条件交渉や最終的な雇用契約に進みます。

この基本的な流れは、障害者転職でも健常者の転職とほぼ変わらず、応募方法も以下のように多様です。

  • 直接応募(企業のホームページや求人情報誌から応募)
  • 転職エージェント・転職サイト(障がい者専門のエージェントも増加中)
  • リファラル(紹介)(社内外の知人や前職の関係者からの推薦)
  • 再雇用(以前に勤務していた企業への再就職)

これらの方法は、一般枠の転職活動で培ったノウハウがそのまま活かせるため、「一般枠での転職経験がある方は障害者転職でもすぐに実践できる」のが大きな特徴です。

一般枠から障害者転職へシフトする現実

多くの障がい者が、もともと一般枠の企業で働いていたものの、病気やケガ、あるいはメンタルヘルスの問題などがきっかけで障害者手帳を取得し、障害者枠での転職活動にシフトするケースが増えています。これには以下のような理由があります。

  • 従来の職場での働き方が難しくなったため
    一般企業での業務遂行が体調や障害の進行により困難になり、環境を変えた方が長期的に働けると判断されるケースが多いです。
  • 今までの経験やスキルが大きな武器に
    一般枠で働いていた経験は、必ずしも障害者枠での就業に不利になるわけではありません。むしろ、一般の職場での実務経験やスキルは、障がい者として採用された場合でも、より広い責任や仕事の幅を持つポジションで活かされることが期待されます。
  • 転職活動の流れは変わらない
    履歴書や職務経歴書で記載する項目はほとんど同じで、面接での質問や評価基準も共通しているため、一般枠での転職経験がある求職者は、障害者枠での転職でもスムーズに活動を進められます。

ただし、障害者枠で転職する場合、自分自身が障がい者として認識されることに対して葛藤を感じる人も多いのが実情です。特に、一般事務などの職種で働く場合、以前は「一般枠」で働いていたにもかかわらず、障害者枠で採用されると、年収が下がり、担当できる仕事の幅が制限されるといった現実があります。

具体的には、身体障害者で平均250万円、精神障害者で平均150万円という統計が示すように、障害者枠での待遇は一般枠と比較してかなり低い水準にあるのが現状です。また、障がい者採用では、契約社員として採用されるケースが多く、正社員登用の機会が非常に限られているため、将来の安定性にも不安が伴います。

また、年収以外にも障害者雇用の場合、ほとんどのケースで契約社員からのスタートという実態があります。一般枠だと基本的に正社員からのスタートですが、障害者枠だと9割以上で契約社員です。よほど経験や再雇用など特殊な事情でもない限り、障害者雇用で正社員から始めることは難しいです。

同時に、契約社員からいつになったら正社員に登用されるのか不安を持つ方が多くいます。正社員への登用条件は企業によって様々であり、半年程度で正社員になれる場合もあれば、数年間の勤務態度で判断される場合もあります。日本は正社員の解雇規制が厳しいですが、契約社員の場合には契約の更新をしなければ解雇することが可能なので、正社員になるまでには安心できません。

これらの要因から、一般枠から障害者枠へと転職する際には、「これまでの経験が大きなアドバンテージ」となる一方で、自分が障がい者として働くことへの心理的な葛藤や年収・雇用形態もあるのが現実です。しかし、多くの場合、障がい者採用に積極的な企業では、合理的配慮が十分に行われ、障がい者が安心して働ける環境が整っているため、転職後の実際の職場環境は予想以上に良好であるケースも多いです。

一般枠での転職経験が障害者転職で有利になる理由

一般枠での転職活動の経験は、障害者転職においても大いに役立ちます。以下にその理由をまとめます。

  • スキルと経験が豊富
    これまで一般枠で勤務してきた経験は、職務遂行能力やコミュニケーション能力、そして業務遂行のスキルとして、障害者転職でも大きな武器になります。一般枠での経験を活かして、より高度な業務や責任あるポジションで活躍する可能性があるため、就職市場における競争力が高まります
  • 転職プロセスに慣れている
    履歴書・職務経歴書の作成、書類選考、面接というプロセスは一般枠でも障害者転職でも同じです。したがって、転職活動の基本をすでに身につけている求職者は、スムーズに障害者枠での転職活動を進めることができます。
  • 多様な応募方法が利用可能
    一般枠での転職と同様、直接応募、転職エージェント、リファラル、再雇用など、多様なルートを通じて求人情報にアクセスできるため、障害者転職でも応募手法の柔軟性があるのです。
  • 合理的配慮の記載がプラスに働く
    履歴書や職務経歴書で、合理的配慮の必要性や障害の特徴を適切に記載することで、企業側も採用後の配属やサポート体制を考慮しやすくなります。これにより、企業は障がい者が本来の能力を発揮できる環境をあらかじめ整える努力をするようになります。

外資系投資銀行に勤務する私の例:障害者枠で働いて良かった

現在、外資系投資銀行の人事部に障害者雇用で勤めています。前職は、自分で運営していたインターネット広告の会社であり、今回の転職が初めての障害者転職でした。転職自体は2、3回行なっているのでやり方などは知っていたものの、障がい者として働くことには大きな不安を持っていました。

初めての障害者枠としての勤務である上に、最も激務とされる投資銀行業界だったので、実は入社するのを躊躇っていた時もありました。でも結果的には、外資系投資銀行に転職することができ、障がい者だからこそ、適度な業務量の調整やメンター制度などの合理的配慮を受けられているので障害者枠で転職活動して良かったと思っています。

合理的配慮として、業務量の調整や業務のマニュアル化、メンター制度、メンターや部長と隔週での面談などがあります。これは自分が会社員として働き続ける為には必要な配慮であり、これがあるからこそストレスなく仕事ができています。

また、年収や雇用形態についても障害者枠では考えられないくらいの恩恵を受けていると思っています。給料は毎月ボーナスを貰っている感覚の額を受け取っていて、今までで1番高い給与を貰っています。億プレイヤーもいる業界で、役職を上げれば給与はまだまだ上がる伸び代があります。
雇用形態も契約社員からのスタートでしたが、入社から半年で正社員に登用されました。正社員への登用条件などない中でしたが、早くから面談で正社員になりたいとアピールしていたおかげだと思っています。あとは、無断欠勤や遅刻、仕事で大きなミスなどがなかったのもあるかもしれません。

まとめ

障害者転職は、一般枠での転職活動の基本的な流れと同様のプロセスで進むため、すでに一般企業での転職経験がある求職者であれば、安心して取り組むことができます。履歴書や職務経歴書、面接といった基本的な手続きに加え、合理的配慮や障害の特徴を適切に記載することで、企業側も採用後の環境整備をスムーズに進めることが可能となります。

また、一般枠で働いていた経験は、障害者枠での転職において、豊富なスキルや責任感として評価される大きな武器となります。実際に、多くの障がい者がこれまで一般枠で培った経験を活かして転職活動を成功させており、その経験が企業での活躍に直結しているのは明らかです。

一方で、障害者枠で働く場合、年収が低く、業務の幅が限定され、正社員への登用が難しいという現実も否定できません。しかし、これは必ずしもネガティブな側面だけではなく、合理的配慮のもとで働く環境が整備されれば、障がい者が自分の能力を十分に発揮し、企業の価値に貢献する可能性が高まることを意味します。企業が障害者雇用に前向きに取り組むことで、離職率が低下し、企業全体のダイバーシティやイノベーションが促進されるというメリットも生まれます。

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