障がい者の株式投資入門|新NISAを活用して将来に備える
障がい者に株式投資をすすめる理由
障がい者の平均年収は、身体障害者で約250万円、精神障害者で約150万円といったデータが示すように、一般的な水準よりも低いのが現状です。さらに雇用形態をみると、契約社員や派遣社員など有期雇用が多く、解雇や契約更新の打ち切りで一気に収入が途絶えるリスクにさらされやすいという課題があります。今後、物価上昇や社会保障制度の揺らぎなど、先行きが見えない時代を考えれば、「いざという時に備えるための資産形成」は障がい者にとってこそ重要な課題と言えるでしょう。
なかでも「貯金2000万円問題」として知られるように、老後資金が十分に確保できないまま歳を重ねると、公的年金(障害年金含む)だけでは生活が困難になるリスクが高まります。障害年金を受給できる人はごく一部であり、精神障害や軽度の身体障害では支給対象外となるケースも多いため、多くの障がい者が「年金なし」の状態で生活しているのが実情です。
一方で、給料が低いゆえに「投資なんて無理」「貯蓄なんてできない」と思う人が多いかもしれません。しかし、少額からでも株式投資を始めることで、インフレに対抗しながら将来の資産を増やす道が開ける可能性があります。株式投資と聞くと「難しそう」「危ない」というイメージを持つ方もいるでしょうが、今は新NISAなどの優遇措置が充実しており、少額投資や長期投資を活用することでリスクを抑えることが可能です。
特に新NISAでは、株式投資や投資信託による利益が非課税となる大きなメリットがあります。本来なら約20%の税金がかかる譲渡益や配当金を、非課税で再投資できれば複利の効果がより一層高まるでしょう。給与が低い障がい者にとっては、貴重な資産形成チャンスを逃す手はありません。
株式投資といっても、難しい相場の読みや財務諸表を分析をする必要はありません。インデックス投資という手法を使えば、世界中の優良企業を幅広く買う形となり、リスクを分散しながらじっくり資産を増やすことが期待できます。つまり、「ローリスク・ローリターンでの長期運用」が基本戦略となり、初心者や投資資金が限られている障がい者でも取り組みやすいのです。
また、株式投資は「キャピタルゲイン(売却益)」の獲得だけでなく、「配当金」や「株主優待」を得る楽しみもあります。配当利回りが3~5%を超える企業銘柄に長期投資すれば、銀行預金の金利よりはるかに高いリターンを得られる可能性があります。
新NISAの始め方とおすすめの投資戦略
新NISA(2024年スタート)は、これまでの一般NISA・つみたてNISAを統合・拡充する形で誕生する制度です。年間最大投資枠480万円(内訳:つみたて投資枠120万円+成長投資枠360万円)と大幅に拡充され、投資で得られた利益が非課税になる画期的な仕組みと言えます。給料が低い障がい者でも、長期にわたって積み立て投資をしていくことで、老後資産や緊急資金の一部を非課税で作ることが可能になります。
新NISAの特徴とメリット
- つみたて投資枠(年間120万円)
- 長期運用に適したローリスクな投資信託が対象
- 信託報酬などのコストが低い商品が多く、リスク分散しやすい
- コツコツ毎月定額で積み立てていくことで、株価の上下に左右されにくい「ドルコスト平均法」が実践できる
- 成長投資枠(年間360万円)
- 個別銘柄や投資信託への投資が可能
- ハイリスク・ハイリターンの銘柄にも投資でき、配当金や株主優待を得られるチャンスがある
- キャピタルゲイン(売却益)を狙う投資スタイルにも対応
新NISAの最大の魅力は、投資で得られた利益が非課税になる点です。通常、譲渡益や配当金には約20%の税金がかかるため、例えば配当金が年に10万円あっても、手取りは約8万円ほどになります。しかし、新NISA口座で投資すれば、この税金部分が0円になる(非課税)ので、手元に10万円まるごと残せるわけです。
つみたて投資枠:インデックスファンドが主力
つみたて投資枠は長期投資に向く投資信託が中心で、ネット証券会社では約200本前後の銘柄が対象になります。有名どころとしては、S&P500(アメリカの主要企業500社に分散投資)や、オールカントリー(オルカン)(世界の株式市場全体に分散)などのインデックスファンドが人気です。
- S&P500
- 米国の代表的な大型株500銘柄に幅広く投資
- 過去には年平均リターンが5~7%程度と言われる
- アメリカ経済の成長に乗る形で、中長期で安定的なリターンを目指せる
- オールカントリー(オルカン)
- 米国はもちろん、ヨーロッパや新興国など世界全体に分散
- 地域の偏りを軽減し、世界の経済成長を幅広く取り込むことができる
- 1銘柄買うだけで数千社以上に投資するイメージなので、リスク分散がさらに高い
つみたて投資枠のポイントは、年間120万円の範囲内であれば何度でも買い付けが可能ですが、対象となる投資信託は一部に限定されていることです。ただし、厳選されたファンドがメインなので、誤って高コストの不健全なファンドを買わずに済むメリットとも言えます。初めて投資をする障がい者の方には、精神的にも“安心感”のある仕組みでしょう。
成長投資枠:個別銘柄やアクティブファンドに投資可能
成長投資枠は、年間360万円まで投資できる枠で、個別銘柄(株式)や一部の投資信託、ETFなどが対象となります。ハイリスク・ハイリターンを狙える半面、リスクも高い点に留意が必要です。
個別投資の例としては、トヨタ自動車や三菱UFJ、ソニー、三井不動産などが挙げられます。配当金や株主優待を目当てに投資する人も多く、配当利回りが5%を超える銘柄なら毎年の現金収入が期待できます。ただし、企業が倒産すると株式の価値がゼロになるリスクがあるほか、株価の変動も大きいため、初心者にはややハードルが高い部分があります。
とはいえ、「安定配当の大企業株を長期保有する」という方針であれば、比較的リスクは低めです。PBR(株価純資産倍率)が1倍前後で、配当利回り3~5%の企業を選べば、倒産リスクはかなり低く配当金も得られやすいでしょう。「三菱商事」「三菱UFJ」「INPEX」などは実際に配当利回りが高いため、障がい者が“年金のように”配当金を受け取りながら長期保有する戦略も考えられます。
実際に、私自身もこの3社を保有しています。特に、将来的に利上げが想定される中で、三菱UFJ銀行はその恩恵を受けており、大きな含み益となっています。
新NISAのはじめ方
- 証券口座を開設
- 株式投資をするには、まず証券会社に口座を開設する必要があります。ネット証券であれば、楽天証券やSBI証券など大手2社がおすすめ。売買手数料が安く、取り扱う投資信託も豊富です。
- 口座開設には、身分証明書(運転免許証やマイナンバー)などが必要。本人確認が完了するまでに1~2週間程度かかることが多い。
- 新NISA口座を同時に申請
- 証券口座と同時に、新NISA口座の開設を申請します。NISAは1人につき1口座しか持てませんので、開設先をよく検討しましょう。
- 申請書類を提出すると、税務署とのやりとり(証券会社が代行)が行われ、1~2週間ほどで「新NISA口座開設完了」の通知が届くことが多い。
- 投資商品を選択して買付
- つみたて投資枠なら、ローリスクな投資信託(インデックスファンドなど)がメイン。1銘柄を選んで毎月定額で買い付ける「積立設定」をすれば、自動で購入が行われる。
- 成長投資枠なら、個別銘柄を購入できる。最初から大きな資金を投じるのではなく、余裕資金の範囲内で少額から始めるのが安心。
- 受渡や管理はネット証券のマイページで確認
- 購入した投資信託や株式の状況は、ネット証券のマイページやアプリでチェック可能。損益や配当金の発生なども随時確認できる。
- 新NISAの非課税期間が終了すると、その時点の評価額を別の課税口座へ移すか、そのまま売却するかを選ぶ必要がある。長期運用を想定しておくと良い。
つみたて投資枠から始めるのが安心
障がい者が初めて投資をするなら、つみたて投資枠を使ったインデックスファンドの積立がおすすめです。毎月定額を積み立てるドルコスト平均法なら、株価が高い時も安い時も同じ額で買い続けるため、取得単価が平均化され、リスク分散が期待できます。
たとえば、「S&P500連動の投資信託を毎月1万円買い続ける」という設定をしておけば、レバレッジや難しい商品を扱うことなく、手間をかけずに資産形成が進むでしょう。仮に株価が下落局面になっても、下がった価格で多めに口数を買えるため、将来的にリカバリーが早くなる可能性があります。
ハイリスク商品への無理な投資は厳禁
株式投資にはリスクがあるのも事実です。特に個別銘柄を短期売買で狙うやり方は、相場の変動に敏感になるため精神的負担が大きく、障がい者が無理をすると健康面にも悪影響が及ぶかもしれません。
初心者はまず、ローリスクなつみたて投資枠を活用し、投資に慣れたうえで、余裕資金があるなら成長投資枠で個別銘柄を検討するのが安全な道です。何よりも、生活防衛資金を最優先に確保し、その上で投資に回せる余力を見極めることが重要と言えます。
まとめ
障がい者の年収は低く、安定した雇用形態を得にくい現状から、将来に対する不安が非常に大きいと言われています。少額でも良いから資産形成を進める意義は大きいでしょう。その意味で、株式投資はインフレや低金利に対抗する有力な手段であり、特に2024年から始まる新NISA制度を活用すれば、非課税のメリットを享受しやすくなります。
投資先としてはつみたて投資枠でインデックスファンドを積み立てるのがおすすめです。S&P500やオールカントリー(オルカン)といった分散度の高いファンドを選び、長期でコツコツ買い続けるスタイルなら、株価の上下にあまり一喜一憂せずに運用できるでしょう。ある程度慣れたり、投資資金に余裕が出てきたら、成長投資枠で配当利回りの高い銘柄や大型優良企業の株式に挑戦するのも良い選択肢です。
最も大切なのは、無理のない範囲で投資を行うこと。生活費を切り詰めすぎてストレスを抱えてしまったり、急な医療費が必要になった際に投資資金を取り崩すようでは本末転倒です。日々の家計管理と生活防衛資金の確保を念頭に置きつつ、投資を少額から始めることで、長期的な資産形成を実現できる可能性は十分にあります。
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最後に、投資にはリスクがあり、相場環境や個別企業の業績に影響を受ける可能性があります。あくまでも自己責任で、リスクを理解したうえで取り組むことが大切です。本記事の内容に基づいて生じた損失について、当社は一切責任を負いかねますのでご了承ください。投資を始める際は、証券会社やファイナンシャルプランナーなど専門家のアドバイスも参考に、慎重に検討するようおすすめします。