障害者雇用として働くための精神障害者保健福祉手帳の取得方法と必要な時間
1.精神障害者保健福祉手帳の基本と取得するための条件
精神障害者保健福祉手帳は、統合失調症やうつ病・躁うつ病などの気分障害、てんかん、高次脳機能障害、発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害など)、薬物依存症、ストレス関連障害などを含む、さまざまな精神疾患に該当する方が取得できる障害者手帳です。
障害者雇用で就職・転職を目指す場合、この手帳を所持していることで雇用者(企業)から配慮を受けやすくなるだけでなく、公共交通機関の割引や税金の減免など、一部の自治体や事業所における優遇措置を受けることが可能になります。とりわけ、障害者枠での求人に応募したい方にとっては、取得を検討することが多いでしょう。
精神障害者保健福祉手帳の対象となる主な病気
- 統合失調症
- うつ病・躁うつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物やアルコールによる急性中毒・依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)など)
- その他の精神疾患(ストレス関連障害など)
上記以外にも精神疾患に分類されるものが含まれる場合がありますが、医師の診断がポイントとなりますので、まずは主治医や専門機関に相談することが重要です。
3つの等級とその特徴
精神障害者保健福祉手帳には、障害の程度に応じた1級・2級・3級の3種類があります。
- 1級:日常生活や社会生活に対する制限が著しく、常時何らかの支援が必要な状態
- 2級:日常生活に部分的な支援が必要だが、自立度や社会参加もある程度可能
- 3級:日常生活への支障は軽度だが、就労や社会生活に対して一定の配慮が必要
企業の障害者雇用枠では、1〜3級いずれでも「障害者手帳所持者」として応募可能なところが多いです。もっとも、実際の雇用場面では等級により必要な配慮が異なるため、担当者と十分にコミュニケーションを取る必要があります。
2.精神障害者保健福祉手帳の取得手順と必要な時間
ここでは、精神障害者保健福祉手帳を取得するための手順と、実際にどの程度の期間がかかるのかを詳しく解説していきます。
1.市区町村の担当窓口での申請準備
最初に、居住地の市区町村役場にある障害者福祉担当の窓口に行き、「精神障害者保健福祉手帳を取得したい」と申し出ます。すると、以下の書類を受け取ることが多いです。
- 障害者手帳申請書
- 医師の診断書用紙(または障害年金証明書の写し等)
- 手帳申請に関する説明書(必要書類や手続き方法が書かれています)
注意点:障害年金を精神障害の理由で受給している場合、障害年金証明書の写しなどを診断書の代わりに提出できるケースがあります。これにより医師の診断書が不要になる場合もあるため、事前に確認しましょう。
2.主治医への診断書作成依頼:初診日から6カ月以上の経過が必要
精神障害者保健福祉手帳の申請には、初診日から6カ月以上経過していなければなりません。
- たとえば、うつ病で初めて受診したのが1月1日の場合、7月1日以降に診断書作成を依頼することが可能というイメージです。
- この6カ月間は「本当に障害が定着しているか」「症状の経過観察が必要か」などを判断する期間と考えられています。
検査や診断にかかる時間
- 新規でクリニックを受診する場合、そもそも検査を行っていないクリニックもあるため、まずは検査対応が可能かを確認。
- 大きな病院での診断だと、診断確定までに半年近くかかることも。
- WAIS(ウェイス)などのIQテストやカウンセリング・問診を複数回行い、ようやく診断が下りるケースも少なくありません。
このため、診断書が手に入るまでに半年近くかかることもあるのが現実。すでに「うつ病」「発達障害」などの診断が下りている方であれば、その主治医に手帳用の診断書を改めて書いてもらうだけで済む場合もあります。
3.申請書類を市区町村の担当窓口に提出
医師に作成してもらった診断書と、以下の必要書類をそろえます。
- 障害者手帳申請書(窓口で受け取ったもの)
- 本人の写真(縦4cm×横3cm)
- 診断書(または障害年金証明書等)
この書類一式を、市区町村の障害者担当窓口に提出します。
- 原則、本人が提出しますが、体調不良や外出困難などの事情があれば、家族や保護者、医療機関職員による代理申請も認められています。
- 提出後は審査が行われ、等級と交付の可否が決定されます。
4.手帳の交付まで:およそ2カ月程度が目安
申請してから交付までの期間は、通常1〜2カ月程度と言われています。ただし、地域によってはもっと早い場合や、逆に時間がかかる場合もあります。
- 私の場合、「1カ月後に役所に問い合わせたら審査結果が出ていて、すぐ手帳を受け取れた」という体験談もあります。
- ただし、大きな病院で診断確定まで時間がかかったり、市区町村の担当部署が混雑していると、3カ月以上待たされるケースもあるようです。実際、4月の繁忙期に精神障害者保健福祉手帳の自治体を変更するだけで3ヶ月近く時間がかかりました。
いずれにせよ、他の障害者手帳(身体・知的)に比べると、精神障害者保健福祉手帳は医師の診断書が通ればほぼ交付されると言われています。障害年金と異なり、大幅に認められないリスクは少ない傾向があります。
まとめ
精神障害者保健福祉手帳を取得するためには、初診日から6カ月以上という時間的制約があるほか、検査・診断確定までのプロセスも含めると、どうしても7~9ヵ月かかってしまうことがあります。それでも、この手帳を所持していることで障害者雇用枠での応募がスムーズになったり、通院配慮や労働時間の調整など、働きやすい環境を整えやすくなるのは大きなメリットです。
障害者雇用枠への応募タイミング
- 手帳が交付されてからの応募が原則的に安心ですが、「申請中でもOK」としている求人もあります。
- もし「障害者枠でなるべく早く仕事を探したい」という場合は、企業に確認した上で申請中に応募するのも一つの方法です。
障害者雇用枠を活用すれば、合理的配慮を受けながら働くことができるため、長期的に安定してキャリアを築きやすくなる方も多いです。特に、精神障害を抱えている方は、定期的な通院や休養が必要な場面が出てくるかもしれません。上司や人事担当者とのコミュニケーションで「手帳を持っているからこそできる配慮」を得られることが、今後の職場定着やキャリアアップに大いに役立つでしょう。
当社のハイキャリア転職支援サービスでは、年収450万円以上を目指す方向けにカウンセリング・レジメ添削・面接対策・求人紹介などを行っています。精神障害者保健福祉手帳を取得して障害者雇用枠で働きたい方も、まずはお気軽にご相談ください。手帳の取得時期や適切な求人へのアプローチなど、あなたのキャリア形成に合わせたサポートを提供いたします。