障がい者は自営業に向いている?メリット・デメリットとおすすめの仕事事例を解説
1.障がい者が自営業を考える理由と向き・不向き
自営業とは何か?
自営業とは、会社に属さずに自分で事業を営み、収入を得ている働き方のことです。個人事業主やフリーランスを指す場合が多いですが、場合によっては法人を設立して経営者になるケースも含まれます。会社員のように組織の一員として働くのではなく、仕事の内容から働く時間、場所、そして報酬も自己責任で決めるのが大きな特徴です。
自営業のメリット
- 時間・場所・仕事量を自由に決められる
- 障がいの症状に合わせて無理のないペースで働ける
- 通院や休息が必要な場合、スケジュールを柔軟に調整可能
- 職場環境へのストレスが少ない
- 自宅やカフェなど、好みの場所で業務ができる
- バリアフリーが整備されていないオフィスに通わずに済む
- 人間関係のストレス軽減
- 組織内の上下関係や社内コミュニケーションが苦手な方に向いている
- マイペースで仕事を進めやすい
自営業のデメリット
- 収入の不安定さ
- 仕事の受注状況や景気の影響を直に受ける
- 病気や障がいの悪化で稼働時間が減ると、収入が一気に減る可能性
- 保険料や税金の負担が増える
- 社会保険料を全額自己負担することになる(会社員なら半額負担)
- 退職金や雇用保険などの仕組みが利用できない
- 事業判断を自分で行う必要
- 収益を上げるための経営判断や契約交渉を自力で行わなければならない
- 責任の重さや、社会的立場の弱さを感じることも
- 社会的信用度が低い傾向
- 住宅ローンやカード契約など、会社員に比べて審査が厳しくなる場合がある
障害種別による向き・不向き
自営業が必ずしもすべての障がい者に向いているわけではありません。 それぞれの障害種別や個々の症状・特性を踏まえながら、自分に合った働き方を考える必要があります。
- 知的障害者
- 多くの場合、会社に属したほうが安定感があり、サポート体制を整えやすい
- 業務をマニュアル化し、決まった手順で進めるほうが得意なケースも多いため、完全フリーより企業内の定型業務のほうが向いているかもしれない
- 身体障害者(内部疾患など通勤に問題がない場合)
- 会社員として働くことで、安定した収入と福利厚生を得られる
- バリアフリー化が進んだ職場であれば、負担が少なく仕事ができる
- 身体障害者(車椅子など通勤が難しい場合)
- 通勤の負担が大きい、あるいは移動環境が整っていない場合、自宅で仕事を完結できる自営業が向いている可能性が高い
- 精神障害者や発達障害者(コミュニケーションが苦手な場合)
- 1人で作業するほうが集中できる、または人間関係によるストレスを避けたいという方に、自営業は非常に魅力的
- 自分の得意分野に特化して仕事量を調整できるメリットがある
「一概に自営業がすべての障がい者に向いている」とは言えませんが、障害種別や個人の性格・スキル、体調管理能力などを総合的に判断して、自営業が最適な選択肢となるケースも多いでしょう。
2.障がい者におすすめの自営業スタイルと準備すべきこと
向いている自営業の例
自営業といっても、その領域は非常に広範です。ここでは、Webで完結しやすい業種や、資格が活かせる業種を中心に、いくつか例を挙げてみます。
- YouTuber・インスタグラマー
- クリエイティブな発想や企画力を活かして、動画や写真コンテンツを発信
- チャンネル登録者やフォロワーを増やし、広告収益や企業案件で収入を得る
- プログラマー・AIエンジニア
- DX化やAI技術の進歩でデジタル人材の需要が高まっている
- 自宅でプログラム開発が可能。オンラインで案件を受注しやすい
- 既に技術を持つ方はもちろん、勉強から始めてスキルを習得する選択肢もある
- デザイナー・ライター・コンサルタント
- パソコンとインターネットがあれば場所を選ばず仕事ができる
- デザインや文章制作、ビジネスコンサルなど、自分の得意分野に特化しやすい
- 資格を活かした独立開業(弁護士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、司法書士など)
- 独立性の高い専門職は自営業として事務所を構えやすい
- 長期的な顧客関係が築ければ、安定した収入を得られる可能性が高い
- ネットショップ運営
- ハンドメイド作品や仕入れ転売など、ネット上で完結するオンラインストア
- 自宅に在庫を保管し、発送作業は配送サービスを活用すれば負担が少ない
- 講師・オンライン教育
- 自身の専門知識や経験を活かして、オンラインでセミナーや講座を開催
- コミュニティサイトやSNSを活用して、生徒を募ることができる
自営業を始める際の注意点と対策
自営業に踏み切る前には、以下のポイントをよく考えておきましょう。
- 確定申告や会計業務
- 自営業では、所得税の確定申告や事業用口座の管理、経費精算などを自分で行う必要があります。
- 簿記3級程度の会計知識があれば、クラウド会計ソフトを利用することでかなりの作業を自動化できます。
- 収入が大きくなれば、税理士に一部業務を依頼する選択肢も検討できますが、安くはないため「選択と集中」が大事。
- 資金準備とリスク管理
- できれば生活費1年分程度の貯金を用意してから自営業を始めるのが理想。
- ゼロから始めると、収入が安定するまでに時間がかかり、メンタル的にも厳しい状況に陥りやすい。
- 最初は副業で試して、徐々に本業としての売上を育てていくのがおすすめ。
- 法人化や雇用保険などの検討
- 個人事業主のままでも活動できるが、事業が大きくなる場合は法人化を検討する選択肢も。
- 法人化すると社会保険の加入義務などが発生するが、信用度が上がるメリットもある。
- 一般的に利益が1000万円を超えると、法人化したことで節税のメリットが得られると言われるが、継続して利益を稼ぎ出せるかが重要。収益下落で法人運営が負担になる場合もある。
- 周囲の支援やコミュニティ
- 一人で事業を営むと、どうしても孤立しがち。
- 税務署や公的機関、NPOなどで起業支援プログラムや障がい者向けの就労支援を行っているところがある。
- オンライン上のコミュニティや勉強会に参加することで、人脈やノウハウを獲得できる。
副業からスタートするのがベスト
自営業の大きなリスクは、収入が不安定になることです。会社員のように毎月決まった給料が保障されるわけではないため、精神的負担を大きく感じる人もいます。そこで、副業から始めて実績を積み、軌道に乗ってきた段階で独立するのが安心です。
- 会社員として働きながらスキルアップや顧客開拓を進める
- 十分な貯金や人脈ができてから、自営業へステップアップ
- 失敗しても会社員に戻れるように「手に職」をつける、あるいは在職中に資格取得を目指す
このように段階的に準備することで、リスクを最小限に抑えて自営業を目指せます。
私の例:アフィリエイトで自営業し法人化
私は2016年にアフィリエイトで個人事業主をしていたことがあります。副業ではなく、退職後にゼロからのスタートだったために、生活費が出るまでに1年半以上もの時間がかかり、一時は会社員に戻ることも考えたほどでした。
結果的に、その後に売上は増えていき、一時は月に200万円以上の利益が出る時もありました。そこで、2018年にビズモアを創業。法人化の手続きは司法書士に委託したものの、会社設立後の決算や社会保険などの手続き全てを自分でやっています。
売上は法人化した時がピークで徐々に減少していき、現在ではほぼゼロの状態です。売上がゼロでも最低7万円の法人住民税がかかりますし、バーチャルオフィス代、クラウド会計の費用負担が出ている状態です。おまけに、決算・法人税申告も自分でやっているので、決算期は数日その作業につきっきりで大変です。
それまでは本業が自営業でしたが、2024年4月から外資系投資銀行に転職したことで自営業が副業になりました。そのまま、会社を畳むことも考えたものの、会社で人事を経験したことで新しいビジネスアイディアを思いついたことで、人事コンサルティングをビズモアの主力ビジネスにしました。
まだ、十分な収益化はできていないものの、大きな期待を持っています。発達障害特有のクリエイティブな思考は自分も持っていると思っていますし、障がい者に特化したビジネスは当事者だからこそ実現できました。
まとめ
障がい者にとって、自営業は一つの有効な選択肢となり得ます。特に、身体障害者で通勤が難しい方や、精神障害・発達障害などでコミュニケーションが苦手な方にとっては、自分の得意分野を活かした自由な働き方が可能になります。ただし、会社員よりも収入が不安定になったり、保険や税務の負担が大きいなどのデメリットもあるため、自分の障がいの種類や性格、スキルセットなどをしっかり見極めましょう。
- メリット:時間や場所の自由、人間関係のストレス軽減、クリエイティビティの発揮など
- デメリット:収入の不安定、社会保険・雇用保険の問題、事業判断の責任、孤立感など
- 対策:簿記・会計知識の習得、クラウド会計ツールの活用、十分な貯金の確保、副業からのスタートが効果的
もし、自営業を検討しているが「自分の障がいやスキルに合った仕事がわからない」「まずは安定した雇用形態で働きたい」という方は、転職や就職を視野に入れてみるのも選択肢のひとつです。スキルを磨きながら副業を進めていき、最終的に独立を目指すという形を取るのもリスク管理としては賢明と言えます。
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