障害者雇用における正社員登用のタイミングとその影響。契約社員との違いについても解説
障害者雇用における正社員とは?
障害者雇用における正社員は、企業と無期契約を結び、フルタイムで働く雇用形態を指します。正社員は契約社員やパートタイムとは異なり、次のような特徴があります。
- 安定した雇用
正社員は基本的に定年までの雇用が保証されるため、障がい者にとっては生活基盤を安定させる大きな要素となります。 - フルタイム勤務
多くの場合、正社員はフルタイム勤務を前提としており、働く時間や内容に柔軟性が少ない場合があります。 - 昇進やキャリア形成の可能性
正社員は、昇進や役職への登用が可能で、契約社員やパートタイムでは得られないキャリアの成長機会が期待されます。 - 福利厚生の充実
正社員は、社会保険やボーナス、退職金制度などの手厚い福利厚生を受けることが一般的です。
障害者雇用で契約社員が前提となる理由
障害者雇用において契約社員が主流である理由は、企業にとってリスク管理や柔軟性が重要視されるからです。障がい者の症状によっては選考では見極められない特性などがあります。入社後に仕事にマッチしなかったり、周囲とのコミュニケーションを図れなかったりするなどのトラブル防止のために、障害者雇用では契約社員からのスタートが多いです。というのも、正社員を解雇するのはハードルが高いからです。一方で、契約社員の場合には契約更新をしなければ雇用契約は解消できます。
契約社員と正社員の違い:企業側の視点から見るポイント
- 雇用期間の違い
- 契約社員は一定期間の雇用契約を結び、更新のたびに継続可否を判断できます。
- 正社員は雇用期間の定めがなく、解雇には厳格な基準が適用されます。
- 採用リスクの管理
- 障害者雇用では、業務適性や職場環境との相性を事前に見極めることが難しいケースがあります。契約社員であれば適性がない場合、契約終了で雇用関係を見直すことが可能です。
- コストの違い
- 正社員は、ボーナスや昇給、退職金が発生するため、契約社員と比べてコストが高くなる場合があります。
- 役割の期待値
- 正社員には、長期的な貢献や責任ある役割が期待されますが、契約社員ではその期待値が限定的です。
正社員への登用タイミングとは?
契約社員として採用した障がい者を正社員に登用するタイミングは、企業にとって慎重に判断すべき重要なポイントです。以下の要素を基準にすることが一般的です。
契約社員には有期と無期があり、正社員と比べると、契約期間が無期限で解雇規制があるのに類似点がありますが、給与・待遇や仕事内容、昇格・昇進などに違いがあります。
正社員登用のタイミングを決める基準
- 業務適性の確認
- 業務内容が障害特性に適合しているかを見極める。
- 業務遂行能力が継続的に発揮されている場合。
- 職場環境への適応
- 同僚や上司とのコミュニケーションが円滑であり、職場の雰囲気に馴染んでいるかを確認します。特に、精神障害者や発達障害者はコミュニケーションを取るのが苦手とする人が多いので、契約期間で職場環境に適応しているかどうか判断をしていくべきです。
- 勤務態度と意欲
- 定期的な評価を基に、責任感や仕事への意欲が高い場合は正社員登用の適機といえます。
- 契約期間の通算
- 5年ルールにより無期転換の対象となる場合、企業が早期に正社員登用を検討するケースもあります。
- 企業の雇用計画
- 企業が法定雇用率を達成するために障がい者の長期雇用を計画している場合は、正社員化が進む傾向があります。
- 業務内容・責任の拡大
- 企業が従業員に業務を広げてもらいたい場合や責任のある仕事に就かせたい場合には正社員に登用するケースがあります。
正社員登用のメリットと企業への影響
障がい者を正社員に登用することは、企業にとっても以下のような利点があります。
- 雇用の安定性によるモチベーション向上
正社員登用により、障がい者は長期的な視点で働く意欲が高まり、生産性の向上が期待できます。障がい者の離職率は高いのが一般的です。特に、精神障害者の離職率は1年で半分が退職しますが、雇用の安定により従業員エンゲージメントが上がり、従業員の働く意欲も高められることが期待できます。 - 企業の社会的責任(CSR)の強化
障がい者の正社員化は、企業のダイバーシティ推進に寄与し、社会的評価を向上させます。 - チームの安定化
長期間働く従業員が増えることで、職場の連携が強化され、業務効率が向上する可能性があります。 - 障害者雇用納付金の削減
法定雇用率を達成しやすくなることで、障害者雇用納付金の負担軽減が期待できます。
私の例:契約社員からスタートし、半年後に正社員へ登用
現在、私は外資系投資銀行の人事部に勤めています。ADHDを持つ私は障害者雇用として、今の勤務先に入社しました。雇用形態は契約期間6ヶ月ごとの契約社員です。雇用契約書には契約更新する際の条件として高いパフォーマンスや効率性などの文言が並び、半年後に更新されるのかビクビクしていた時もありました。
雇用形態は契約社員でしたが、給与は障害に隔てなく高い給与が設定されていました。正社員ほど貰っていませんが、それでも毎月ボーナスみたいな金額をもらっているイメージです。福利厚生は利用できないサービスがいくつかあり、DCプランや借り上げ社宅制度もその一つです。
結局、半年後には正社員へ登用されたので契約更新を経験することはなかったですが、6ヶ月で正社員登用は稀なケースだと思います。投資銀行業界も人事部という仕事も人生初だったので、会社側は大胆な決断をしたと思います。ただ、この判断が出来たのも投資銀行だからこそというのもあるかもしれません。投資銀行業界も簡単に解雇は出来ませんが、それでもPIPが設定され、ゴールをクリアできない社員や、ジョブ型雇用でジョブ自体が無くなってしまった場合の社員はRIF (Reduction In Force)という大量解雇されることもあります。
障がい者は障害者雇用促進法の大事なカウントとなるので、守られていると言われているものの、同業他社ではRIFで解雇したところもあります。怖い話、解雇することに慣れている投資銀行だからこそ、短期間で正社員への登用をさせたのかなと思います。
まとめ
障害者雇用における正社員登用は、企業と従業員の双方にとってメリットがありますが、慎重な判断が求められます。
当社では、障がい者採用支援サービスを通じて、採用計画の策定から正社員登用に至るまでのプロセスをトータルで支援しています。