障害者差別解消法とは?概要を事例とともにわかりやすく徹底解説
障害者差別解消法の目的と概要
障害者差別解消法(正式名称:「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)は、障害を持つ方々の生活や活動の自由を保障するための法律であり、2016年に施行されました。この法律は、障害を持つ人々が教育、雇用、サービス利用、その他の社会活動に平等に参加できるようにすることを目的としています。障害者雇用において以下の障害者雇用促進法と並び、障がい者にとって重要な法律です。
日本は、高齢化社会と同時に多様性を受け入れる社会へと変化しており、その中で障害者への対応は、企業や行政において重要な課題の一つです。この法律の施行は、社会全体における障害者差別の認識を高め、より良い環境整備を目指した大きな一歩でした。
障害者差別解消法には以下の2つの柱があります。
- 不当な差別的取扱いの禁止
- 障害を理由にした不当な扱いや差別行為の禁止を規定。
- 例:入店拒否や、特定の条件付きでしかサービスを提供しない行為。
- 合理的配慮の提供義務
- 障がい者が直面する困難を緩和するための配慮を行うことを義務化。
- 配慮の具体例:物理的な障壁を取り除く、情報の提供方法を変える、柔軟な勤務時間を認める。
障害者差別解消法の詳細な内容
1. 不当な差別的取扱いの禁止
「不当な差別的取扱い」とは、障害を理由に、他の人と異なる不公平な扱いをすることです。たとえば、障害が理由でサービスの利用を拒否したり、商品購入時に特別な条件を課すことなどが含まれます。
- 例:
- 車いす利用者が店舗に入る際、段差を理由に入店を拒否。
- 聴覚障害者に対して、通訳を付けるという条件でしかサービス提供を認めない。
これらの行為は、障害者差別解消法に基づいて禁止されており、特に行政機関では絶対的に許されません。
2. 合理的配慮の提供義務
合理的配慮とは、障害のある方がサービスや環境を平等に利用できるよう、個々のニーズに応じて調整や変更を行うことを指します。
配慮の例:
- 環境面での調整:バリアフリー設備の導入、点字ブロックの設置。
- 情報面での配慮:視覚障害者向けに音声案内を用意、聴覚障害者には筆談を活用。
- 勤務環境の配慮:障害者が仕事を続けやすいように、勤務時間の柔軟な設定や業務内容の調整を行う。
合理的配慮の負担基準
企業や団体が合理的配慮を提供する際、過度な負担が生じる場合は義務が免除されることがあります。以下の基準が考慮されます。
- 事業の規模:大企業と中小企業で対応可能な範囲は異なります。
- 配慮の費用:コストが著しく高額な場合。
- 実現可能性:技術的な困難さがある場合。
例えば、建物の設計変更が大規模で費用が膨大になる場合、負担が過大と判断される可能性があります。
障害者差別解消法に該当する事例と例外的なケース
ケース1:求人募集時に障害種別で条件を設定
ある企業が求人募集時に、「身体障害者に限る」や「知的障害者を除く」といった条件を設定した場合、これは障害者差別解消法に違反する可能性があります。
該当する場合:
- 不当な差別的取扱いに該当し、法的に禁止されます。
例外が認められる場合:
- 業務遂行において特定の障害種別が不可欠であることが証明される場合(例:視覚的な観察が必要な職務において、重度の視覚障害が不可避な障壁となる場合)。
- 法的に定められた雇用基準を満たすために必要とされる場合(例:特定の障害に特化した雇用促進プログラム)。
企業はこうした条件を設定する際、透明性を確保し合理的な説明を準備する必要があります。
ケース2:合理的配慮の追加要請が発生
入社後、障害を持つ従業員から選考時に話していなかった新たな合理的配慮を要請された場合、その対応はどうなるでしょうか?
該当する場合:
- 企業が配慮を拒否した場合、合理的配慮の提供義務違反として法的に問題となる可能性があります。
例外が認められる場合:
- 配慮を提供することが事業運営に過度な負担を強いる場合。この場合、企業は「過重な負担に該当する理由」を説明し、代替案を検討する必要があります。
例えば、聴覚障害者から新たに手話通訳を常時配置してほしいという要請があった場合、企業規模や財務状況によって対応が困難であれば例外が認められることがあります。ただし、その際は他の方法での支援(例:筆談ツールの導入)を検討することが求められます。
具体的な事例で見る障害者差別解消法の適用
事例1:視覚障害者向けの情報提供
ある書店では、視覚障害者が利用しやすいよう、電子書籍に音声案内機能を追加しました。この対応により、書籍情報を視覚的に確認できない方にも平等なサービスが提供されました。
- ポイント:
- サービスの一部を調整することで、障害者への平等なサービス提供が可能になる。
- 高コストでない場合は対応を求められる。
事例2:車いす利用者の施設利用
飲食店で車いす利用者が段差を越えられず、入店できなかったケース。この問題に対して、店舗側がポータブルスロープを設置し、対応した例があります。
- 重要な点:
- 店舗側が少ない費用負担で改善できる場合、配慮義務を果たすべき。
- 対応が困難な場合も代替案の検討が求められる。
事例3:障害の有無に関係なくキャリア採用に応募
大企業を中心に、中途採用では障害の有無に関係なくエントリー可能、とする企業が最近は増えてきました。このような求人を掲載する企業の場合、障がい者採用ページを設けていないので、障がい者はライバルが多いキャリア採用から応募する必要があります。企業は選考にあたり、障害の有無に関係なく、候補者選びをしていくことになります。
障害者差別解消法に対する誤解と注意点
誤解1:すべての合理的配慮が義務化される
事業者には合理的配慮の提供が求められますが、過剰な負担になる場合は例外とされます。配慮を拒否する場合、事業者は明確な理由を説明する必要があります。
誤解2:合理的配慮は一律で提供されるべき
配慮の内容は個々の状況によって異なります。障害の種類や個人の特性に応じた柔軟な対応が求められるため、一律の配慮ではなくオーダーメイドの対応が重要です。
障害者差別解消法と企業の対応
1. 障害者雇用での対応強化
企業は採用プロセスから合理的配慮を提供する準備を整える必要があります。具体的には、以下の取り組みが求められます。
- 採用基準の透明化:障害の有無にかかわらず、公平な採用基準を設ける。
- 採用面接時の配慮:選考中に障害に応じた対応(例:手話通訳の配置)。
2. 職場環境の整備
職場では、障害者が働きやすい環境を整えることが重要です。具体的には:
- 業務内容の調整:個人の特性に応じた業務分担を行う。
- 柔軟な勤務形態:障害の種類に応じてテレワークや時短勤務を導入。
まとめ
障害者差別解消法は、障がい者の平等な社会参加を支える重要な法律です。企業や行政がこの法律に基づき、障がい者への差別を防ぎ合理的配慮を提供することは、社会全体の多様性の向上につながります。
当社では、障がい者の採用計画から採用方法の策定、雇用後の支援まで幅広くサポートしています。ぜひ、お気軽にご相談ください。