障害者雇用を組織全体で推進する意義と組織改革の方法

障害者雇用が進む背景

昨今、法定雇用率の上昇やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の重要性の高まりを受け、多くの企業で障がい者雇用が推進されています。一部の企業では、障がい者を積極的に雇用することで業績向上や生産性の向上につながった事例も増えています。例えば、ファーストリテイリングや資生堂、しまむら、JTなどでは法定雇用率を大幅に上回る障がい者を雇用しています。

しかし、その一方で、多くの企業は「雇用後の障がい者をどのように組織内で活躍させるか」という課題に直面しています。

障害者雇用における課題

障害者雇用が十分に活用されない要因として、以下のような点が挙げられます:

  1. 経営陣の理解不足
    経営陣が障がい者雇用の意義やメリットを十分に理解していない場合、組織全体での取り組みが形骸化しがちです。障害者雇用を単に法律で義務付けられているから、という理解の場合に当てはまることが多いです。
  2. 人事部のみに依存した取り組み
    障がい者の採用が人事部内で完結してしまい、他部門がその取り組みを知らないケースが多くあります。この状況では、組織全体の協力を得ることが難しくなります。
  3. 社内での認知度の低さ
    障がい者が職場でどのように活躍し、会社に貢献しているのかが共有されないため、同僚や管理職がその価値を理解できていない場合があります。
  4. 障がい者自身のカミングアウトへの抵抗
    一部の障がい者は、自身の障害を職場でオープンにすることに不安を抱えることがあります。このため、周囲がその障害を理解する機会が限られてしまいます。よくある例として、年末調整の際に障害の欄にチェックを付けることで所得控除などを受けることができますが、障がい者として働いている人よりも実際の数は多いというケースがあります。

組織全体で取り組むことの重要性

障害者雇用を成功させるには、企業全体での対応が必要です。その理由をいくつか挙げてみます。

1. 障がい者雇用の理解度が向上

組織全体で障がい者雇用を共有することで、他の従業員や管理職の理解が深まり、支援体制が整います。これにより、障がい者が働きやすい環境が構築されます。

2. 定着率の向上

例えば、精神障害者の1年後の離職率が約50%に達する現状があります。しかし、組織全体で障がい者に積極的に声をかけたり、サポートしたりすることで、孤立を防ぎ、離職率低下に寄与する可能性があります。

3. 生産性の向上

適切なサポートがあれば、障がい者は自分の強みを発揮しやすくなり、組織全体の生産性を高めることができます。さらに、障がい者が活躍する姿を見ることで、他の従業員のモチベーションも向上することが期待されます。

4. ダイバーシティの推進

障がい者が組織に貢献している姿を知ることで、他の多様な人材を受け入れる風土が醸成されます。これにより、企業全体の競争力が向上します。

障害者雇用を組織で対応するための具体的な方法

障害者雇用を組織全体で取り組むには、以下のような方法があります:

1. 経営陣への教育と啓発

経営陣に対して障がい者雇用の重要性をデータや事例を用いて説明し、理解を深めることが第一歩です。障がい者がどのような部門でどういう仕事をして、会社に貢献しているのかを示すことで経営陣にも理解しやすくなります。

2. 社内研修の実施

従業員向けに障がい者雇用について学ぶ研修を行うことで、現場での協力体制を構築できます。

3. 成果の可視化

障がい者が組織内でどのように貢献しているかを定期的に共有する場(社内報や全体会議など)を設けると良いと思います。

4. メンター制度の導入

障がい者と既存の従業員がペアを組むメンター制度を導入することで、サポート体制を強化できます。

5. 継続的なフィードバック

障がい者やその周囲からのフィードバックを集め、柔軟に対応策を改善することが重要です。

障害者雇用がもたらすメリット

  1. 企業の社会的評価の向上
    障害者雇用に積極的に取り組む企業は、社会的責任を果たす姿勢が評価され、ブランドイメージが向上します。
  2. 多様な視点の活用
    障がい者の持つ多様な視点や経験が、イノベーションを生み出すきっかけになります。
  3. 従業員のエンゲージメント向上
    障がい者を受け入れる風土が従業員に伝わることで、職場全体のエンゲージメントが高まります。
  4. 業務の効率化
    障がい者を受け入れる際に業務マニュアルを作成する際に、重複している業務、誰も関与できていなかった業務など業務プロセスを見直しするきっかけになります。これにより、既存の従業員の業務効率化は向上しますし、業務マニュアルを作成したことでスムーズに業務の引き継ぎができるようになります。

まとめ

障害者雇用は、企業の成長に不可欠な要素であり、組織全体で取り組むことで多くのメリットを享受できます。障害者雇用の理解促進やサポート体制の強化は、企業文化を根本から変革し、持続可能な成長につながるでしょう。

当社では、障がい者雇用を成功させるために、経営陣や従業員向けの研修プログラムや支援サービスを提供しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。