障害者雇用納付金の計算方法を詳しく解説|具体例で簡単な年間の金額を計算できる
はじめに:障害者雇用納付金とは?
障害者雇用納付金は、企業が法定雇用率を達成していない場合に納付するお金です。しかし、単なる罰金ではありません。障害者の雇用促進を目的とした制度であり、納付金の一部は、雇用率を達成している企業への調整金や、障害者の雇用支援事業などに活用されます。
障害者雇用納付金の概要
項目 | 概要 |
---|---|
対象 | 常用労働者数が100人を超える事業主 |
申請時期 | 事業年度終了後4ヶ月以内 |
支払時期 | 申請後、概ね2ヶ月以内 |
障害者雇用納付金制度は、障害者の雇用を促進し、安定させることを目的とした法律に基づいた制度です。企業は、一定割合の障害者を雇用する義務(法定雇用率)を負っており、この義務を果たしていない場合は、納付金を支払うことになります。
障害者雇用納付金の仕組み
法定雇用率と法定雇用障害者数
- 法定雇用率: 企業が雇用しなければならない障害者の割合。
- 法定雇用障害者数: 企業が雇用しなければならない障害者の数。これは、常用労働者数に法定雇用率を掛けて算出します。
納付金制度の種類
障害者の雇用人数に応じて、以下の5つの納付金制度の中から適した制度を利用することができます。
- 障害者雇用納付金: 法定雇用率を下回っている場合に納付。
- 障害者雇用調整金: 法定雇用率を上回っている場合に支給。
- 特例給付金: 週20時間未満で障害者を雇用している場合に支給。
- 報奨金: 常用従業員数100人以下でも、一定人数の障害者を雇用している場合に支給。
- 在宅就業障害者特例調整金: 自宅で働く障害者を雇用している場合に支給。
障害者雇用納付金(雇用人数が足りない場合)
条件 | 金額 | 計算方法 |
---|---|---|
法定雇用率を下回っている場合 | 1人月額50,000円 | 不足している障害者数×1人月額50,000円 |
最も重要なポイントです。法定雇用率を達成していない場合、不足している障害者数一人につき、月額5万円の納付金が発生します。
障害者雇用納付金の算出例として挙げたのが上記の表です。仮に、法定雇用人数が毎月10人で、雇用数が8人、不足している障がい者数が2人の場合、一人当たり月額5万円かかるので毎月10万円かかる計算になります。これを年間ベースでは120万円になります。
ただ、障がい者数がプラスの月がある場合には計算が複雑になります。そこで、簡単な計算方法が累計の障がい者の不足数に月額5万円を掛け合わせることです。24×5万円で120万円と算出することができます。
もし、年間を通して不足ではなくプラスである場合には下記の障害者雇用調整金を受け取ることができます。年間のプラスの人数に2.9万円を掛け合わせれば障害者雇用調整金を算出することができるので年間ベースで考えると簡単です。
障害者雇用調整金(雇用人数が達成した場合)
条件 | 金額 | 計算方法 |
---|---|---|
法定雇用率を上回っている場合 | 1人月額29,000円 | 超過している障害者数×1人月額29,000円 |
法定雇用率を上回って障害者を雇用している場合は、超過している障害者数一人につき、月額2.9万円の調整金が支給されます。
特例給付金(週20時間未満で雇用している場合)
条件 | 金額 | 計算方法 |
---|---|---|
週20時間未満で障害者を雇用している場合 | 1人月額14,500円 | 雇用している障害者数×1人月額14,500円 |
週20時間未満で障害者を雇用している場合も、一定額の給付金が支給されます。
報奨金(常用従業員数100人以下でも雇用している場合)
条件 | 金額 | 計算方法 |
---|---|---|
常用従業員数100人以下で、一定人数の障害者を雇用している場合 | 1人月額14,500円 | 雇用している障害者数×1人月額14,500円 |
常用従業員数が100人以下の企業でも、一定人数の障害者を雇用している場合は、報奨金が支給されます。
在宅就業障害者特例調整金(自宅で働く障害者を雇用している場合)
条件 | 金額 | 計算方法 |
---|---|---|
在宅就業障害者に年間35万円以上の仕事を発注している場合 | 1人月額14,500円 | 雇用している障害者数×1人月額14,500円 |
自宅で働く障害者に一定額以上の仕事を発注している場合も、調整金が支給されます。
障害者雇用納付金の申告義務はあるか?
まず、常用雇用労働者の人数を調べます。
- 常用雇用労働者: 1ヶ月以上継続して雇用されることが見込まれる労働者。
- 短時間労働者: 1週当たりの労働時間が20時間未満の労働者。
常用雇用労働者が100人を超える場合は、申告が必要ですが、100人以下の場合は、申告は不要です。
障害者雇用納付金の申告の流れ
- 常用雇用労働者の総数を把握する
- 障害者の雇用総数を把握する
- 申告申請書を作成して提出する
- 納付金の支払い
- 調整金や報奨金を受け取る
障害者雇用納付金で損をしないために
- 常用雇用労働者の計算間違いを防ぐ
- 対象になる障害者を間違えないようにする
- 申告や納付金の支払いを怠らないようにする
障害者雇用納付金の計算で困った時にはハローワークに相談へ
障害者雇用納付金の申請ないし郵送の提出先は管轄のハローワークになります。
もし、障害者雇用納付金やロクイチ報告である高年齢者・障害者雇用状況報告書など、障がい者に関するお困りごとで分からないことがあれば、ハローワークに相談するのがおすすめです。
私は4月に人事部に転職してきて、5月15日までに提出する障害者雇用納付金の作成を任されましたが、初めての仕事で全く書き方が分からなかったので管轄のハローワークにはお世話になりました。実は早めに提出した書類にミスがあったんですが、すぐに資料を確認してくれて電話越しに詳しく修正する点を教えてもらい、無事に期限通りに完成することができました。
まとめ
障害者雇用納付金は、障害者の雇用促進を目的とした制度です。障害者を採用しなければ、納付金として年間60万円のコストがかかります。しかし、障害者を採用することで得られる助成金や補助金があり、経済的負担は少なくて済むだけでなく、企業の多様性や生産性の向上にもつながります。
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