発達障害者の雇用のポイント|知っておきたいADHDやASDの支援と配慮
発達障害とは
発達障害は、脳の特性によって対人関係やコミュニケーションに難しさを感じる特性です。主にADHD(注意欠陥多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)などが含まれます。特性の現れ方は人によって異なり、日常生活や職場における適応には個別の配慮が必要です。
–ADHD(注意欠陥多動性障害):注意力の欠如や多動性、衝動性の3つの特性がある。注意力の欠如として、長時間の集中が難しい、課題や仕事を忘れやすい、細かいミスが多いなどがある。多動性として、落ち着きがない、過度におしゃべりをするなどの言動が見られる。衝動性として、すぐに考えずにすぐに行動してしまう、他人の会話を遮る鼓動が多い、感情のコントロールが難しいなどがある。
一方で、エネルギッシュで想像力が豊かであることが多い。自由な発想力が求められる環境で柔軟な働き方が可能であると能力を発揮しやすく、コミュニケーション能力や対人スキルは高い。
–ASD(自閉症スペクトラム):コミュニケーションにおける困難さ、限定的な興味、相手の気持ちや空気を読むのが苦手である一方、集中力や記憶力、専門知識などが高い傾向にある。特定のタスクや興味のある分野に対して高い集中力を発揮し、特定の情報を非常に高精度かつ長期間にわたって記憶する能力を持つなどの特徴がある。
–LD(学習障害):知的能力に問題はないものの、特定の学習領域に困難を抱える障害。読み書きや計算、読解力などに苦手さを感じる方がいる。具体的に、文字を読むのに時間がかかる、読み間違いが多い、計算式を理解するのに苦労するなどがある。
障がい者のうち、発達障害者の雇用者数は8.2%。
発達障害者の内訳として、ASDが69.1%、ADHDが15.2%、LD2.4%。中には併発している人も多く、自分自身もADHDとASDを併発しており、人によってADHD寄りだったり、ASD寄りだったりの人がいる。
発達障害の働き方:一般採用枠と障がい者採用枠の違い
発達障害者の採用には、一般枠(クローズド就活)と障がい者採用枠の2つのアプローチがあります。
- 一般採用枠(クローズド就活):自ら障害をオープンにせずに採用を目指す方法です。長所は通常の業務プロセスに適応できる方には向いている点で、短所は必要な配慮が受けにくい場合もあります。
- 障がい者採用枠:発達障害であることを伝えて採用される方法で、企業が必要なサポートや配慮を提供しやすくなります。長期的な就業の安定や配慮のしやすさがメリットです。
発達障害者の雇用状況:精神障害者の雇用義務化
2018年から、法定雇用率に精神障害者の雇用が義務付けられ、発達障害もその対象に含まれるようになりました。これにより、企業は発達障害者を含む精神障害者を積極的に採用する必要性が高まり、より多くの企業が配慮や支援の方法を学ぶようになっています。
一方で、企業にとっては精神障害者や発達障害者を採用・雇用するノウハウがまだ蓄積されていないのが課題としてあります。身体障害者と比べると、精神・発達障害者は一人一人で症状や配慮も異なるので企業側にとって手探りの状態だと思います。
発達障害者が急増
大人のADHD診断件数は2010年から2019年にかけて約21倍に増加しています。ADHDやASDの理解が進み、多くの大人が自分の発達特性に気づき、診断を受けるケースが増えました。その結果、発達障害の特性を持つ人々が一般枠ではなく、精神障害者枠で就職を目指すことも可能になり、適切な配慮のもとでの活躍が期待されています。
ADHDやASDなどの精神疾患を持っていて初診日から半年以上経過していれば、精神障害者保健福祉手帳を取得することが可能です。手帳を取得すれば障がい者枠でエントリーする権利を持つことになります。あくまで権利なので、手帳を持っていても一般枠でエントリーもできます。
障がい者枠では大企業でも学歴や経歴を問わないところが多く、門戸が広いのが特徴です。したがって、障がい者枠で大企業や外資系企業にエントリーできるチャンスがあります。
発達障害者に向いている仕事
発達障害者には、得意分野を活かせる仕事が適しています。以下はその一例です:
- 繰り返し作業やルーチンワーク(ADHDの集中力を活かせる場合)
- 分析やリサーチ業務(ASDの特性が強みになるケース)
- 正確なデータ入力やチェック業務(細かい作業に向いている場合)
発達障害者の強みを引き出すため、特性に応じた役割を検討することが重要です。
発達障害者を雇用する上での合理的配慮
発達障害者の職場適応には合理的配慮が求められます。具体的には:
- 業務の指示方法を工夫し、マニュアルや指示書を明確にする
- 静かな作業環境を提供し、集中を妨げない職場づくり
- 定期的なフィードバックやカウンセリングを実施し、悩みを聞くサポート
これらの配慮があることで、発達障害者のスムーズな業務遂行が可能になります。
障害者雇用として外資系投資銀行に働いている私も合理的配慮を受けながら仕事をしています。仕事のボリュームの調整やメンターとの面談、業務のマニュアル化、イヤホン着用などの配慮をしてもらっています。選考時は合理的配慮として仕事の指示をメモやメールなどの文字情報で伝えてほしいことと、定期的な面談を求めていました。
でも、会社側は仕事のボリュームの調整もしてくれていますが、非常にありがたい合理的配慮です。また、昔から音に神経質で日常生活ではノイズキャンセリング付きのヘッドホンを着けているので、この件を上司に相談したところ全然OKとのこと。すぐに仕事用としてAir Pod Pro2を購入して仕事中のほとんどはそれを着用しています。これを着けているとノイズが聞こえない分、話しかけられても聞こえないことから上司から他のチームの上司にイヤホンを着用していることを話してもらいました。
まとめ
発達障害者の雇用は、法定雇用率の達成のみならず、個人の特性を活かした働き方を支える意義があります。
当社では、発達障害者の雇用促進に関する支援を行っており、初めての障がい者雇用でもスムーズに導入できるようサポートいたします。ご関心がございましたら、お気軽にご相談ください。