精神障害者雇用の成功ポイントと注意点:1年後半数が離職する実態と合理的配慮を活かした定着支援

精神疾患の増加と雇用の現状

現在、精神疾患は増加傾向にあり、職場での精神障害者の雇用が急務となっています。身体障害や知的障害とは異なり、精神障害者には以前は健常者として働いていた経験者が多く、躁うつ病などの影響で障がい者枠に転向するケースも見られます。

採用活動においても、障がいを隠して行う「クローズド就活」ではなく、あえてオープンに就職活動を行う障がい者枠のほうが、合理的配慮を受けられ、自分のペースで働きやすい環境が得られる利点があります。企業としては、このようなオープン就活のメリットを理解し、積極的に合理的配慮を提供することが望まれます。

精神障害者の主な疾患と特徴

精神障害の中でも多くのケースにおいて特性が異なり、企業はこれを考慮した対応が重要です。代表的な精神障害には以下のような疾患があります。

  1. 躁うつ病(双極性障害)
    躁とうつの状態を行き来する特徴があり、気分の波が激しい場合があります。活力が急激に変動するため、職場でのストレス管理が重要です。
  2. 統合失調症
    幻覚や妄想を伴う場合があり、過剰なストレスが症状に悪影響を及ぼすことが多いです。安定した業務環境が求められます。
  3. 不安障害
    過度の不安感や緊張感を抱える症状があり、特定の状況で症状が悪化しやすいため、業務の配慮が必要です。

厚生労働省の調査によると、雇用者の中で躁うつ病が17%、統合失調症が12.2%、その他が16.6%というデータがあります。
これらの精神障害が障がい者雇用の一部を占め、企業は個々の特性や配慮事項を理解することが必要不可欠です。

採用プロセスにおけるポイント

精神障害者の採用においては、限られた時間の中で個々の特性や合理的配慮が必要かを見極めることが重要です

一般的には人事面接1回、部門面接数回という流れが多いですが、この短いプロセスで特性を十分に把握することは難しいのが現実です。そのため、人事面接を複数回に分けたり、カジュアル面談を設けたりすることで、候補者とより多くの接点を持つことが有効です。当社の障がい者採用支援サービスでも、このようなプロセスを取り入れることで、候補者の特性を適切に見極め、安心して働ける職場環境の確保を目指しています。

雇用形態と定着率の課題

精神障害者の採用では、面接で好印象だった場合でも入社後に態度が変わることがあるため、いきなり正社員雇用を決定せず、契約社員としてスタートする、または正社員の場合でも長めの試用期間を設けることが推奨されます。

勤務先でもある精神障害を持った従業員の雇用継続で問題になりそうな時がありました。この方は優秀なキャリアを持った方だったのですが、勤怠が安定せず休みがちでした。投資銀行業界未経験での転職ということもあったので雇用形態は契約社員で入社していたおかげもあり、本人の合意のもとで契約期間で更新せずに雇用を終了することができました。よく誤解されがちですが、外資系投資銀行でも簡単に解雇することはできません。契約社員でも合意が必要ですし、正社員なら尚更です。

定着率向上のためのサポート体制

厚生労働省のデータによると、身体障害者の平均勤続年数は12年2か月であるのに対し、精神障害者は約5年3か月と短い傾向にあります。また、入社後1年の定着率は約49.3%で、半数が1年以内に離職している実態があります。このような状況から、採用後の定着支援が非常に重要です。

精神障害者の定着率を上げるためには、職場内での継続的なサポート体制が鍵となります。具体的には以下のサポート方法が有効です:

  • メンター制度
    職場内にメンターを設け、業務や日常的な悩みを相談できる体制を構築します。
  • 定期的な人事面談
    定期的な面談により、困難を抱えた時に早期に対応できる仕組みを整備します。
  • 産業医やカウンセラーとの面談
    精神的な負担が大きい場合、産業医やカウンセラーによるサポートが重要です。
  • 障がい者同士の交流会
    同じような立場の仲間と交流することで、精神的な支えを得られる環境を作ります。

これらのサポート体制は、精神障害者が持続的に働き続けられる環境づくりのために不可欠です。

まとめ

精神障害者の採用と定着は、配慮の行き届いた選考プロセスやサポート体制の整備が求められます。当社の障がい者採用支援サービスでは、優秀な人材を見極めるための採用プロセスの改善や、定着率向上のためのサポート体制構築に関するアドバイスを提供しています。